ご監修
兵庫医科大学小児科学 講師
李 知子 先生
DMDとは
DMDは、小児期に最も高頻度に発症する進行性で致死性の筋萎縮症であり、主に男児に発症します。X染色体短腕に存在するジストロフィン遺伝子の異常により、筋細胞膜を保護するジストロフィンが欠損し骨格筋が障害されるため発症します。
DMDの臨床経過
DMDでは幼児期には歩行を獲得するものの、10~12歳ごろには自立歩行を喪失します。10歳〜20歳代以降になると呼吸不全や心不全を合併し、生命予後に影響します。近年では呼吸管理を中心とした医療進歩により、平均寿命が30歳を超えています。また、約1/3では知的障害・自閉スペクトラム症を合併すると報告されています。
DMD治療の変化と早期発見の重要性
これまで、DMDに対する治療は、ステロイドやリハビリテーションなどの対症療法が中心であり、十分な進行抑制効果は得られていませんでした。しかし近年、国内初のエクソン・スキッピング作用を持つDMD治療剤としてビルテプソ®が承認され、一部の適応ながら、疾患の原因に働きかける治療が可能になりました。こうして治療選択肢が増えたことで、DMDの早期発見・早期治療が重要性を増しています。
DMDの早期発見のためには、乳幼児期の初期症状や血液検査が重要です。
DMD早期発見のポイント①初期症状
DMDでは、乳児期に運動機能の異常を指摘されることは多くありません。一方、「伝い歩き」から「独歩」まで半年以上あいたり、「独歩」が遅れ1歳6ヵ月以上となったりする場合があります。
また、個人差はありますが、3歳〜5歳くらいになると、つまずきや転倒が多い、階段昇降が苦手、ジャンプができないなどの症状や、下腿肥大、Gowers徴候、動揺性歩行などが見られます。
母子健康手帳の活用
乳幼児健診は運動機能の異常を発見する重要な機会ですが、緊張により普段の様子と異なる場合もあります。母子健康手帳の保護者の記載欄には運動発達に関する項目があり、普段の様子の参考にすることができます。
DMD早期発見のポイント②血液検査
運動機能の異常のほか、血液検査での高CK血症もDMDの診断契機となります。乳幼児健診では血液検査は実施されません。筋力低下や運動機能の異常が見られる場合、血液検査で血清クレアチンキナーゼ(CK)を測定してください。DMDの場合には数千~数万U/Lが持続することが特徴です。血清CKが高値の場合、DMDを疑って専門施設へご紹介ください。
DMD疑いの患者さんがいらっしゃいましたら、
専門医へご紹介ください。
お役に立ちましたか?
お気に入りメモ