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-POD24-(Progression of disease within 24 months) FL患者の予後不良に関連する早期エンドポイント(海外データ)

Validation of POD24 As a Robust Early Clinical Endpoint of
Poor Survival in FL from 5,225 Patients on 13 Clinical Trials

Casulo C, et al. Blood. 2022; 139(11): 1684-1693.

【監修者コメント】

濾胞性リンパ腫(Follicular Lymphoma;FL)は造血器腫瘍の中でもOSが良好な疾患であるが、一部の症例は早期再発を起こし予後不良となる。早期再発の指標としてNational LymphoCare Studyのデータをもとに提唱されたPOD24(初回化学療法後24ヵ月以内の再発・増悪)について、いくつかの研究でその重要性が検証されているが、本報告では13のランダム化比較試験に登録された5,225例においてPOD24症例の予後を解析している。

今回大規模の解析においてもPOD24症例は有意にOS短縮と関連していることが示され、さらにR-chemo群におけるPOD24のリスク因子も抽出された。今回の解析にはBendamustineは含まれておらず、示されたリスク因子については前向き試験での検証が必要である。

今後は層別化治療を目指し、早期再発を予測するバイオマーカーの確立が期待される。

渋川医療センター
リンパ腫・骨髄腫センター長 斉藤 明生 先生

目的、対象、方法

目的:
POD24*1リスク因子の検討およびPOD24症例の予後の解析
対象:
1993年から2015年に報告された、FL2000試験やPRIMA試験を含む13のランダム化比較試験*2に登録された未治療の濾胞性リンパ腫(FL)患者 5,225例*3
方法:
  1. ① POD24リスク因子の検討 ロジスティック回帰分析*4

    ※ベースライン時にβ2ミクログロブリン値を測定した9試験によるサブセット解析も実施

    ※リツキシマブ(R)維持療法を実施した3試験によるサブセット解析も実施

  2. ② POD24と予後の解析

    ・Cox回帰分析*4,5

    ※R維持療法を実施した3試験によるサブセット解析も実施

    ・ランドマークCox解析*4,5

    ※試験登録から24ヵ月経過時点の生存症例が対象

*1
本解析では「各試験登録から24ヵ月以内の再発・進行」と定義
*2
各試験の詳細については補足を参照
*3
FLASH(Follicular Lymphoma Analysis of Surrogate Hypothesis)データを使用
*4
多変量解析
*5
年齢で調整、PSおよびFLIPIで層別化

患者背景 -POD24発生状況別-

5,225例のうち、29.3%(1,531例)がPDとなり、2.5%(130例)が試験登録から24ヵ月以内に死亡した。アントラサイクリン系薬剤の投与を受けた患者は62.5%、リツキシマブは53.2%であった。

下表は、POD24の状態別のベースライン特性であり、24ヵ月目に進行が認められた患者(POD24症例)と認められなかった患者(非POD24症例)において、PS 0-1はそれぞれ91.5%と95.5%、病期Ⅰ/Ⅱ期は3.4%と6.8%、FLIPIスコア 低リスクは10.3%と20.4%、ベースライン時のヘモグロビン値 正常は72.3%と83.0%、β2ミクログロブリン値 正常は58.6%と72.9%であった。

POD24症例
(n=1,531)
非POD24症例
(n=3,564)
全体
(n=5,225)
年齢
平均値(標準偏差) 55.2歳(±11.14) 55.0歳(±11.13) 55.2歳(±11.16)
中央値(範囲) 56.0歳(17.0-84.0) 56.0歳(19.0-90.0) 56.0歳(17.0-90.0)
性別
女性 697例(45.5%) 1,811例(50.8%) 2,558例(49.0%)
男性 834例(54.5%) 1,753例(49.2%) 2,667例(51.0%)
PS
0-1 1,372例(91.5%) 3,315例(95.5%) 4,777例(93.9%)
≧2 127例(8.5%) 158例(4.5%) 313例(6.1%)
不明 32例 91例 135例
Ann Arbor分類
不明 3例(0.2%) 17例(0.5%) 22例(0.4%)
I/II期 52例(3.4%) 242例(6.8%) 301例(5.8%)
III/IV期 1,476例(96.4%) 3,305例(92.7%) 4,902例(93.8%)
FLIPI
低リスク 149例(10.3%) 694例(20.4%) 855例(17.2%)
中間リスク 457例(31.5%) 1,344例(39.5%) 1,823例(36.7%)
高リスク 845例(58.2%) 1,363例(40.1%) 2,284例(46.0%)
不明 80例 163例 263例
節性病変
0-4個 306例(28.4%) 1,084例(41.1%) 1,427例(37.6%)
>4個 772例(71.6%) 1,553例(58.9%) 2,371例(62.4%)
不明 453例 927例 1,427例
ヘモグロビン値(ベースライン時)
正常 839例(72.3%) 2,471例(83.0%) 3,372例(79.5%)
低値 322例(27.7%) 507例(17.0%) 871例(20.5%)
不明 370例 586例 982例
β2ミクログロブリン値(ベースライン時)
正常 520例(58.6%) 1,667例(72.9%) 2,205例(68.4%)
≧3mg/L 368例(41.4%) 620例(27.1%) 1,018例(31.6%)
不明 643例 1,277例 2,002例

POD24リスク因子、OS【全症例】

多変量ロジスティック回帰分析の結果、POD24リスクを上げる因子として、「男性」「PS≧2」「FLIPI中間リスク」「FLIPI高リスク」「β2ミクログロブリン≧3mg/L」の5因子が抽出された。

POD24リスク因子(n=4,751)
オッズ比(95%CI) P値
男性 1.30(1.14-1.47) <0.0001
PS≧2 1.63(1.27-2.10) 0.0001
FLIPI中間リスク 1.58(1.28-1.94) <0.0001
FLIPI高リスク 2.94(2.41-3.59) <0.0001
β2ミクログロブリン≧3mg/L 1.43(1.19-1.70) <0.0001

*ベースライン時にβ2ミクログロブリン値を測定した9試験によるサブセット解析(n=3,046)による

Cox回帰分析の結果(n=4,852)、POD24症例では有意にOS不良であった(ハザード比:4.85、95%CI:4.32-5.45、P<0.01)。

また、試験登録から24ヵ月経過時点の生存症例を対象としたランドマークCox解析の結果(n=4,423)は以下の通りであり、POD24症例では有意にOS不良であった(ハザード比:3.03、95%CI:2.65-3.47、P<0.01)。

イベント数 OS中央値
(95%CI)
HR
(95%CI)
3年OS率
(95%CI)
5年OS率
(95%CI)
全症例 881/4,423例 17.9年
(17.5-NE)
95.60%
(94.9-96.1)
87.90%
(86.9-88.9)
非POD24症例 459/3,328例 17.9年
(17.5-NE)
(対照) 98.50%
(98.0-98.8)
93.60%
(92.7-94.4)
POD24症例 422/1,095例 11.4年
(9.8-NE)
3.03
(2.65-3.47)
86.80%
(84.6-88.7)
71.20%
(68.4-73.8)

POD24発生率 24.8%(1,095/4,423例)

*P<0.01

Reprinted from Blood, 2020010263, Carla Casulo, et al., Validation of POD24 As a Robust Early Clinical Endpoint of Poor Survival in FL from 5,225 Patients on 13 Clinical Trials, Copyright(2021), with permission from Elsevier on behalf of American Society of Hematology.

POD24リスク因子、OS【R-化学療法群

※一次治療としてR-化学療法を選択した群

多変量ロジスティック回帰分析の結果、リツキシマブを含む導入化学療法(R-化学療法)を受けた患者では、POD24リスクを上げる因子として、「男性」「PS≧2」「FLIPI高リスク」「β2ミクログロブリン≧3mg/L」の4因子が抽出された。

POD24リスク因子(n=2,222)
オッズ比(95%CI) P値
男性 1.38(1.12-1.70) 0.0027
PS≧2 1.71(1.13-2.59) 0.0119
FLIPI高リスク 2.62(1.87-3.66) <0.0001
β2ミクログロブリン*≧3mg/L 1.81(1.41-2.32) <0.0001

*ベースライン時にβ2ミクログロブリン値を測定した9試験によるサブセット解析(n=1,852)による

Cox回帰分析の結果(n=2,252)、POD24症例では有意にOS不良であった(ハザード比:5.39、95%CI:4.40-6.61、P<0.01)。

また、試験登録から24ヵ月経過時点の生存症例を対象としたランドマークCox解析の結果(n=2,133)は以下の通りであり、POD24症例では有意にOS不良であった(ハザード比:3.58、95%CI:2.85-4.49、P<0.01)。

イベント数 OS中央値
(95%CI)
HR
(95%CI)
3年OS率
(95%CI)
5年OS率
(95%CI)
全症例 309/2,133例 NE
(NE-NE)
97.30%
(96.5-97.9)
91.50%
(90.2-92.7)
非POD24症例 180/1,763例 NE
(NE-NE)
(対照) 99.10%
(98.6-99.5)
95.40%
(94.2-96.3)
POD24症例 129/370例 NE
(10.2-NE)
3.58
(2.85-4.49)
88.30%
(84.6-91.2)
73.50%
(68.5-77.8)

POD24発生率 17.3%(370/2,133例)

*P<0.01

※24ヵ月時点

Reprinted from Blood, 2020010263, Carla Casulo, et al., Validation of POD24 As a Robust Early Clinical Endpoint of Poor Survival in FL from 5,225 Patients on 13 Clinical Trials, Copyright(2021), with permission from Elsevier on behalf of American Society of Hematology.

Reprinted from Blood, 2020010263, Carla Casulo, et al., Validation of POD24 As a Robust Early Clinical Endpoint of Poor Survival in FL from 5,225 Patients on 13 Clinical Trials, Copyright(2021), with permission from Elsevier on behalf of American Society of Hematology.

サブセット解析:リツキシマブ維持療法を実施した3試験

リツキシマブによる維持療法を含む3つのランダム化試験のサブセットにおける多変量ロジスティック回帰分析の結果、POD24リスクを上げる因子として「FLIPI高リスク」、POD24リスクを下げる因子として「リツキシマブ維持療法」が抽出された。

POD24リスク因子(n=1,248)
オッズ比(95%CI) P値
男性 1.23(0.94-1.63) 0.14
PS≧2 1.58(0.79-3.14) 0.20
FLIPI高リスク 1.94(1.31-2.86) <0.01
リツキシマブ維持療法 0.39(0.30-0.52) <0.01

Cox回帰分析の結果(n=1,255)、POD24症例では有意にOS不良であった(ハザード比:4.68、95%CI:3.52-6.23、P<0.01)。

※24ヵ月時点

Reprinted from Blood, 2020010263, Carla Casulo, et al., Validation of POD24 As a Robust Early Clinical Endpoint of Poor Survival in FL from 5,225 Patients on 13 Clinical Trials, Copyright(2021), with permission from Elsevier on behalf of American Society of Hematology.

まとめ

  • 本報告では、13のランダム化比較試験に登録された未治療FL患者 5,225例を対象として後方視的に併合解析を実施した。
  • 一次治療としてR-化学療法を選択した場合において、以下に示す4因子がPOD24リスクを上げる因子として同定された。
    『男性』『PS≧2』『FLIPI高リスク』『β2ミクログロブリン≧3mg/L』
  • 全症例およびR-化学療法群において、POD24症例では推定3年生存率/推定5年生存率の低下を認め※1、OSが有意に不良であった※2
    ※1
    ランドマークCox解析より
    ※2
    ランドマークCox解析およびCox回帰分析より
  • リツキシマブ維持療法を実施した3試験の解析により、POD24リスクを上げる因子として『FLIPI高リスク』が、POD24リスクを下げる因子として『リツキシマブ維持療法』が抽出された。
  • POD24はFL患者の予後不良に関連する早期エンドポイントとして重要であり、抽出されたPOD24リスク因子が早期死亡/再発の指標となる可能性が示された。

補足

● 解析対象の13のランダム化比較試験
試験名 レジメン
E1496(Hochster, 2009) MR vs. Obs after CVP
FL2000(Salles, 2008) CHVP+I vs. R-CHVP+I
GELF862(Solal-Celigny, 1993)
(Solal-Celigny, 1998)
(Bachy, 2010)
CHVP vs. CHVP+I
GELF942(Sebban, 2006) CHVP+I vs. CHOP+HDT
GOELAMS064(Gyan, 2009) CHVP vs. VCAP+ASCT
GLSG2000(Hiddemann, 2005) CHOP vs. R-CHOP
M39021(Marcus, 2008) CVP vs. CVP+R
OSHO39(Herold, 2007) MCP vs. R-MCP
ML16865(Kimby, 2015) R vs. R+IFN
ML17638(Vitolo, 2013) R vs Obs after R-FND
GLSG1996(Nickenig, 2006) CHOP vs. MCP
OSHO19(Herold, 2006) BOP vs. COP
PRIMA(Salles, 2010) MR vs. Obs maintenance

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