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肺高血圧症とは?
- 未治療であると右心不全に至る、予後が不良な疾患です1)。
- 肺動脈性肺高血圧症(PAH)は早期診断・早期治療介入により予後が改善することが分かっています。
- 膠原病、肺疾患には肺高血圧症が潜在している可能性もあり1)、積極的なスクリーニング検査を行うことで早期診断が可能になります。
1)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン2017
スクリーニング検査により肺高血圧症が疑われる症例は、循環器内科へ紹介し、
肺高血圧症の鑑別診断を行うことおよび
肺高血圧症と診断された症例に対して適切に治療介入を行うことが重要です。
呼吸器内科と循環器内科の連携

呼吸器内科から循環器内科への紹介については、
上記の基準が一例になります。
呼吸不全だと思っていたら実は肺高血圧症が隠れていたという場合もあるので、呼吸器内科としては、息切れが肺病変によるものだけではなく肺循環障害でも起こりうるということに留意しておくことが重要です。
そうですね。呼吸器疾患が軽度でPAHが主体と考えられる症例には、低酸素血症などのリスクを踏まえて、肺血管拡張薬の導入を考慮します。そのような症例を見出すためにもスクリーニング検査の施行が重要であり、疑わしい症例がいれば遠慮なく循環器内科に紹介していただくことも大切です※。
※:実際に右心カテーテル検査を行うかは、心電図での右心負荷や胸部CTでの肺動脈拡大所見、左心疾患合併の有無を参考に 循環器内科で決定する。
膠原病リウマチ科と循環器内科の連携

膠原病リウマチ科から循環器内科への紹介については、上記の基準が一例になります。
早期に紹介していただくことで、早期にPAHを診断し、適切に治療を開始することが可能になります。
強皮症や混合性結合組織病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群の患者さんは肺高血圧症を合併するリスクが高いので、息切れなどの症状に気を付けましょう。
強皮症の患者さんでは、スクリーニング検査を行って早期に肺高血圧症を見つけて2)適切な治療を開始すれば、予後が改善されることが分かっています。リスクの高い膠原病患者さんでは、年1回のスクリーニング検査を行い、TRPG≧35mmHgなど、循環器内科への紹介の基準を設けることが大切です。
2)Humbert M, et al. Arthritis Rheum. 2011; 63(11): 3522-3530.
膠原病リウマチ科からご紹介いただく症例のなかには、PAHの診断基準を満たさないborderline PH症例や左室拡張障害、呼吸器疾患が主体の症例も多くいます。
しかし、膠原病患者さんではPAHを発症する前のborderline PHの時点から注意深くフォローすることが重要であり、呼吸苦の原因が左心系にあるのか、呼吸器疾患にあるのか、PAHにあるのかを右心カテーテル検査※を含めた精査で鑑別することは、治療方針を決定する上で大きなメリットがあると考えられます。
※:実際に右心カテーテル検査を行うかは、心電図での右心負荷や胸部CTでの肺動脈拡大所見、左心疾患合併の有無を参考に循環器内科で決定する。
肺高血圧症診療における診療科連携の重要性について
循環器内科にて実際に膠原病に伴うPAHを診断していただき、肺血管拡張薬の治療で患者さんが楽になられるという成功体験を一例ずつ積み重ねることにより、スクリーニング検査の重要性や時機を逸しない紹介タイミングを循環器内科と共有できるようになると考えられます。
肺疾患を合併するPAHの治療はリスクとベネフィットのバランスにおいて、難しい側面があるのは確かですが、適切な患者さんに適切な治療を行うためにもスクリーニング検査を続け、疑い症例がいれば循環器内科に紹介することが大切です。
肺高血圧症を疑う症例がいた場合に直接電話等ですぐに相談できる診療科連携があることが大切だと考えられます。
循環器内科としては、依頼があれば極力右心カテーテル検査により精査を行い、呼吸苦の原因がPAHなのか、左心不全なのか、肺疾患なのかを明確にすることが適切な治療介入に必要と考えています。
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