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PHの診断にシンチは必須?~鑑別診断のポイントとPitfall~

監修

  • 監修

    東京大学医学部附属病院
    高度心不全治療センター

    センター長
    波多野 将 先生

今回は、波多野 将 先生に、第2群~第4群の診断・鑑別のポイントやPitfallをご解説いただきます。

肺高血圧症を診療する先生へ

肺高血圧症(PH)の臨床分類を鑑別する際は、自身のあらゆる知識を総動員して、
すべての可能性を拾い上げていく必要があります。

大変な作業ではありますが、適切な鑑別は、患者さんの予後を大きく左右します。
患者さんの良好な予後のために、
自分は何かを見落としてはいないだろうか」ということを
常に意識して、
PHを鑑別していただきたいと思います。

PHの診断アルゴリズム

PHの存在が疑われる場合、まずPHのうち最も高頻度にみられる左心疾患と肺疾患の可能性を考えま1)これらの可能性が除外された場合、肺換気血流シンチグラフィを用いて、第4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の存在を検討し、最後に肺動脈性肺高血圧症(PAH)のサブグループおよび他のまれな病態について各種検査を用いて鑑別しま1)

検査の流れ・検査内容等

  • PHの存在が
    疑われる場合
    PHのうち最も高頻度にみられる左心疾患と肺疾患の可能性を考慮
  • 左心疾患と肺疾患の可能性が
    除外された場合
    肺換気血流シンチグラフィ
    第4群のCTEPHの存在を検討
  • PAHのサブグループおよび
    他のまれな病態について各種検査を用いて鑑別
1)伊藤浩・松原広己 編集:新 肺高血圧症診療マニュアル, 2017, p50

第4群:CTEPHを鑑別するポイント

CTEPHの診断には肺換気血流シンチグラフィが必須です。換気分布に異常のない区域性血流分布欠損(segmental defects)を認めるときにはCTEPHを疑います。CTで診断が困難とされる亜区域枝以下の末梢塞栓も肺換気血流シンチグラフィで診断できる場合が多いです。ただし、紛らわしい所見を示すことがあります。たとえば、肺腫瘍血栓性微小血管症の所見はCTEPHのような血流欠損が認められることがあり、鑑別を迷うことがあります。そのため、CTEPHの確定診断には、肺動脈造影もしくは胸部造影CTと、右心カテーテル検査を行い、肺血管内肉腫、先天性肺動脈狭窄、肺動脈血管炎などの疾患を鑑別します。

第4群(CTEPH)の診断に必須となる肺換気血流シンチグラフィ

  • 肺換気血流シンチグラフィ
    換気分布に異常のない区域性血流分布欠損
    (segmental defects)
  • CTEPHを疑う

肺動脈造影の位置付け

  • ・侵襲性の高い検査ではあるが、CTEPH以外の肺動脈狭窄閉塞の鑑別に必須
  • ・CTEPHの手術適応・バルーン肺動脈形成術(BPA)適応の判断にも必須

肺動脈造影所見2)

  • ・肺動脈の分枝が閉塞し、器質化した血栓による閉塞部末端に造影剤が貯留した所見(pouch like defect)
  • ・造影不良により生じるスリット状の陰影(webs and bands)
  • ・血栓および内膜の肥厚による血管壁の不整(intimal irregularities)
  • ・主肺動脈の突然の狭小化(abrupt narrowing)
  • ・肺動脈の閉塞(complete obstruction)など
2)Koning R, et al. Circulation. 1997;96(8):2498-500.

第4群を鑑別する際のPitfall

当院へ紹介された症例で、以下のようなケースがありました。

  • Case1

    CTEPHをIPAHと診断してしまっていた

    理由 肺血流シンチグラフィにおいて、IPAHで認められるmottled likeの血流低下と、CTEPHで認められる楔型の血流低下を鑑別できていなかったため
  • Case2

    CTEPHと診断されていたものの、実は末梢性肺動脈狭窄(PPS)だった

    • 理由 肺動脈造影が施行されていなかったため
    • CTEPHとPPSは、病態が異なるにもかかわらず、肺動脈造影以外の手段では鑑別診断がきわめて困難

第2群:左心性心疾患に伴うPHを
鑑別するポイント

第2群は、基本的には右心カテーテル検査の肺動脈楔入圧(PAWP)によって区別します。しかし、測定時の心不全状態、年齢、併存疾患によって基準となるPAWP 15mmHgを容易にまたいで変化し、分類を誤る可能性があります。そのため、正確な測定の仕方、輸液負荷、左心疾患のリスク因子の有無などによって分類を判断していきます。
正確な測定の仕方の例として、右心カテーテル検査でのポイントのひとつは、「正しくwedgeできているか」ということが挙げられます。右心カテーテル検査は、基本的な検査である一方、正しい結果を出すことが難しい検査でもあります。特に、重症例は正しくwedgeできていない場合がありますので、検査結果に自信が持てない場合は、一度、手順や解釈を丁寧に見直す必要があると思います。
また、検査は朝食や昼食を欠食にして行うことが多いと思いますので、脱水気味のことがあります。そのため、ボリュームステータスが過小評価になることがあり、注意が必要です。

第2群を鑑別するポイント

  • PAWP測定
    • ・正しくWedgeできているかの確認
    • ・ボリュームステータスが過小評価になっていないかの確認
  • 輸液負荷等
    • ・500mLまたは7mL/kgの生食を5~10分で急速輸液、PAWPのカットオフ値は18mmHg3)
    • ・足上げ負荷
  • 左心疾患のリスク因子の有無
    • ・高血圧、肥満、糖尿病、冠動脈心疾患など
3)波多野 将 編著『肺高血圧症診療ハンドブック』中外医学社、2020年

第3群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う
PHを鑑別する際のポイント

第3群の鑑別は、循環器内科医にとっては難しい場合があります。特に、単純な第3群の症例と、第1群と第3群の要素が併存している症例の鑑別は非常に難しいと考えています。そのため、治療介入する余地があれば肺血管拡張薬を投与してみて、ある程度の改善が得られれば、第1群の要素があった症例だと考え、治療を継続することが現実的な鑑別方法だと思います。一方、単純な第3群だった場合、肺血管拡張薬の投与は症状を悪化させてしまうことがあります。したがって、第3群の要素がある症例に肺血管拡張薬を投与する際は、専門医による鑑別を行い、十分な管理のもとで投与することが重要です。

第3群を鑑別するポイント

  • 第1群の要素がある場合
    肺血管拡張薬により改善が得られる可能性
    第3群の要素がある場合
    肺血管拡張薬により症状が悪化する可能性
  • 第1群と第3群の要素が併存していることがあるため、専門医による鑑別を行い、十分な管理のもとで肺血管拡張薬を投与する

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