開発の経緯
フィンテプラ®内用液2.2mg/mL(以下フィンテプラ®、本剤)は、フェンフルラミンを有効成分とする経口液剤です。
Dravet症候群は薬物療法に強い抵抗性を示す難治性てんかん症候群であり1, 2)、国が指定する難病です。様々な種類の発作が頻発し、神経行動、認知、発達及び運動に関わる重大な併存疾患を伴うことから、患者やその家族の生活の質(QOL)に重大な悪影響を及ぼします。そのため、Dravet症候群に伴うてんかん発作の治療には、発作回数を減少させ、発作が起きない期間を長く維持することが求められています。
フェンフルラミンは、かつて成人の肥満治療のための食欲抑制剤として欧州(1960年代)や米国(1970年代)で承認、118ヵ国で販売されていました(用量:60~120mg/日)。しかし、心臓弁膜症や肺動脈性肺高血圧症の発生との関連が報告され、1997年に世界中で販売が中止されました。一方で1980年代に難治性てんかんに対するフェンフルラミンの有効性が報告されたことから、ベルギーにおいて長期の非盲検試験(最長32年間投与)が実施されました3, 4)。
これを受けて、2015年にZogenix社(現ユーシービー社)は、Dravet症候群患者におけるてんかん発作に対して、フェンフルラミンの臨床評価を開始し、米国、欧州及び日本などでも2016年よりDravet症候群に対する本剤の開発が始まりました。
2~18歳の小児及び若年成人のDravet症候群患者を対象とした、海外無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験(試験15)及び試験2コホート26))及び非盲検継続試験(1503試験の中間解析7))等が実施され、2020年に米国と欧州でそれぞれ承認を取得しました。
国内においては、海外の試験データに加えて、日本人を含めた国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験(試験38))を根拠として、2021年12月に申請を行い、2022年9月に「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないDravet症候群患者におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能又は効果として製造販売承認を取得しました。
なお、本剤は2021年8月にDravet症候群に対する希少疾病用医薬品[指定番号(R3薬)第519号]に指定されています。
さらに、2023年6月にLennox-Gastaut症候群の適応取得を目的とした承認事項の一部変更承認申請が行われました。Lennox-Gastaut症候群は重度かつ複雑なてんかん性脳症であり、抗てんかん薬で発作をコントロールできないこと、発作に伴う転倒によって負傷する可能性があること、90%を超える患者に知的障害が認められること、重大な心理社会的影響を及ぼし、長期予後は不良なことが知られています。いずれの抗てんかん薬でも単独で高い効果が得られたというエビデンスはなく、新たな抗てんかん薬に対するメディカルニーズが存在していました。
本剤のLennox-Gastaut症候群の小児及び成人を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(1601試験9, 10))が実施され、有効性及び安全性が確認された結果、2024年3月に「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないLennox-Gastaut症候群患者におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用療法」への効能又は効果の一部変更が承認されました。
- 1)Dravet C, Dev Med Child Neurol. 2011; 53(Suppl 2): 1-6
- 2)Takayama R, et al., Epilepsia. 2014; 55: 528-38
- 3)Ceulemans B, et al., Epilepsia. 2012; 53: 1131-9
- 4)Ceulemans B, et al., Epilepsia. 2016; 57: e129-34
- 5)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):試験1(Dravet症候群患者を対象とした第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験)
- 6)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):試験2コホート2(Dravet症候群患者にZX008とスチリペントールを併用投与した第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験)
- 7)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):1503試験(Dravet症候群患者を対象に補助療法としてZX008の長期安全性を評価した第Ⅲ相、非盲検継続試験)中間報告
- 8)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):試験3(Dravet症候群患者を対象とした第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験)
- 9) 日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):ZX008-1601試験パート1[小児及び成人Lennox-Gastaut症候群患者の発作に対する他の抗てんかん薬との併用療法として2種類の固定用量のZX008経口液剤を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験]コホートA
- 10) 日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):ZX008-1601試験パート1[小児及び成人Lennox-Gastaut症候群患者の発作に対する他の抗てんかん薬との併用療法として2種類の固定用量のZX008経口液剤を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験]コホートB
- 【21. 承認条件】
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21.1医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
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