3.試験2 コホート2(スチリペントール併用海外第Ⅲ相臨床試験)
(海外データ)6, 13)
- 6)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):試験2コホート2(Dravet症候群患者にZX008とスチリペントールを併用投与した第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験)
- COI:本試験はZogenix社の支援により実施された
- 13)Nabbout R, et al., JAMA Neurol. 2020; 77: 300-8
審査報告書やCTDでは、本剤の用量を「フェンフルラミン塩酸塩」として表記しておりますが、本ページでは、換算係数0.864を用いて有効成分である「フェンフルラミン」として記載しています。
試験概要
目的
小児及び若年成人Dravet症候群患者を対象として、スチリペントール(STP)と併用したときのフェンフルラミンの有効性及び安全性を確認する。
試験デザイン
多施設共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照試験
[28施設(カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、英国、米国)]
対象
小児及び若年成人Dravet症候群患者87例
[主な選択基準]
- スクリーニング来院日時点で2~18歳の男女。
- Dravet症候群の臨床診断を支持する病歴を有し、痙攣発作が従来の抗てんかん薬で完全にコントロールされていない。
- 以下の5項目すべてに合致する。
- 1.生後1年以内に発作が発現した以外は健康な乳児であった。
- 2.全般強直間代発作、半側間代発作、又は両側間代発作のいずれかの持続性発作の発現歴を有する。
- 3.初期発達が正常であった。
- 4.磁気共鳴画像法(MRI)で脳に皮質形成異常が認められず正常。
- 5.代替診断がない。
- 以下の3項目のうち1項目以上に合致する。
- 1.最初の発作の後に、異なる種類の発作(ミオクロニー発作、全般強直間代発作、強直発作、脱力発作、欠神及び/又は焦点発作を含む)が発現した。
- 2.高温環境への長時間曝露によって誘発される発作、疾患又はワクチン接種による発熱、高温の風呂、高い活動レベル及び急な温度変化に関連する発作、強い自然光又は蛍光照明、特定の視覚的パターンによって誘発される発作のいずれかが発現した。
- 3.Dravet症候群の診断と整合する遺伝学的検査結果を有する。
- スクリーニング前の4週間以上にわたり、てんかんに対する投薬又は介入(ケトン食療法及び迷走神経刺激療法を含む)に変更がなく、試験期間中も維持される予定である。
[主な除外基準]
- フェンフルラミン又は治験薬に含まれる添加物に対する過敏症を有する。
- 肺動脈性肺高血圧症を有する。
- 心血管疾患又は脳血管疾患(心臓弁膜症、心筋梗塞、脳卒中など)の病歴を有する。
- 過去1年以内に、1ヵ月を超える治療又は心理学的治療を要する神経性無食欲症、過食症又はうつ病の病歴を有する。
- 緑内障の病歴を有する。
- 中等度から重度の肝機能障害を有する。
- 次のいずれかの治療を併用している:中枢作動性の食欲抑制剤、モノアミン酸化酵素阻害薬、臨床的に大きなセロトニン作動作用若しくは拮抗作用(セロトニン再取り込み阻害作用を含む)を有する中枢作動性の化合物、トリプタン、アトモキセチン若しくはその他の中枢作動性のノルアドレナリン作動薬、又はシプロヘプタジン(短期的な治療が必要とされる場合、メディカルモニターが症例ごとに対応した)。
- 維持療法として、カルバマゼピン、oxcarbazepine*1、eslicarbazepine*2、フェノバルビタール又はフェニトインを投与されている、又は過去30日以内に投与された。
- グレープフルーツ、セビリアオレンジ又はこれらのジュースの大量摂取や日常的摂取を、ベースライン期以降の試験期間にわたり控える意志がない。
- スクリーニング時に尿検査パネルでtetrahydrocannabinol(THC)陽性又は全血検査でcannabidiol(CBD)陽性。
*1 国内未発売、 *2 国内未承認
投与方法
試験2コホート1で18例の患者から得られたPKデータ・安全性データ及び、1505試験(健康成人を対象とした薬物相互作用試験)のデータを併せて評価し、本コホートで用いるフェンフルラミンの用量を0.4mg/kg/日(最高用量17mg/日)に決定した。
本コホートでは、ベースライン期(6週間)の終了後に、適格患者を以下のいずれかの投与に1:1の比となるように二重盲検下で無作為化した。
- 一定用量のSTP、クロバザム(CLB)及び/又はバルプロ酸全般(VPA)併用下でフェンフルラミン0.4mg/kg/日(最高用量17mg/日)を1日2回に均等にわけて投与
- 一定用量のSTP、CLB及び/又はVPA併用下でプラセボを1日2回投与
投与群間で均衡を取るため、各年齢グループの患者の25%以上がいずれの投与群にも含まれるように、年齢(6歳未満、6歳以上)で層別して無作為化した。
3週間の漸増期に、すべての患者に対して、治験薬を無作為化された用量まで盲検下で漸増投与した。3段階で漸増し、Day0~Day6にフェンフルラミン0.2mg/kg/日(又は対応するプラセボ)で開始した後、Day7~Day13に0.35mg/kg/日、Day14~Day20に0.4mg/kg/日に増量した。いずれの時点でも最高用量を17mg/日とした。
漸増期終了後、12週間の維持期を設け、無作為化された用量で治験薬投与(フェンフルラミン0.4mg/kg/日又はプラセボ)を継続した。漸増期開始から維持期終了までの合計投与期間は最長15週間であった。
二重盲検期の投与スケジュール(STP併用)
有効性評価項目
-
(1)主要評価項目
- T+M期の平均痙攣発作回数(28日間あたり)のベースラインからの変化
-
(2)副次評価項目
- T+M期の50%以上レスポンダー率
- T+M期の痙攣発作の最長無発作期間 等
安全性評価項目
有害事象、臨床検査、バイタルサイン 等
解析計画
-
(1)解析対象集団
安全性解析対象集団:無作為化され、フェンフルラミン又はプラセボを1回以上投与された患者87例。すべての安全性評価項目の解析に用い、無作為化された投与群別に解析した。
有効性解析対象集団:無作為化され、フェンフルラミン又はプラセボを1回以上投与された患者のうち、1週間以上の日誌記録を有する患者87例(mITT集団)。フェンフルラミン0.4mg/kg/日投与とプラセボ投与を比較する主要解析及び主な副次解析に用い、無作為化された投与群別に解析した。
-
(2)有効性
有効性の主要評価項目は、T+M期の痙攣発作回数(28日間あたり)のベースラインからの変化であった。ベースライン期及びT+M期に得られたすべてのデータを用いて痙攣発作回数を算出した。主要評価項目を、投与群及び年齢グループ(6歳未満、6歳以上)を因子、ベースラインの痙攣発作回数(28日間あたり)の対数換算値を共変量、T+M期の痙攣発作回数(28日間あたり)の対数換算値を反応変数としたANCOVAモデルを用いて解析した。主要解析では、有意水準を5%とした両側検定によってフェンフルラミン0.4mg/kg/日群とプラセボ群とを比較した。
副次評価項目の50%以上レスポンダー率は、痙攣発作回数がベースラインから50%以上減少した患者割合を、ベースライン期の痙攣発作回数、治療群、年齢グループ(6歳未満、6歳以上)を関数としたカテゴリー反応変数(50%減少達成又は未達成)を含むロジスティック回帰モデルで解析した。また、痙攣発作の最長無発作期間は、Wilcoxon順位和検定にて解析した。 -
(3)安全性
治験薬投与下で発現した有害事象を投与群別に解析した。
【6.用法及び用量】(抜粋)
〈Dravet症候群〉
-
(1)スチリペントールを併用する場合
通常、成人及び2歳以上の小児には、フェンフルラミンとして1日0.2mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により1日0.4mg/kgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。また、1日用量として17mgを超えないこと。 -
(2)スチリペントールを併用しない場合
通常、成人及び2歳以上の小児には、フェンフルラミンとして1日0.2mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により1日0.7mg/kgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。また、1日用量として26mgを超えないこと。
患者背景
ベースラインのmITT集団
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
全体 (n=87) |
|
---|---|---|---|
年齢(歳) | |||
平均値(SD) | 8.8(4.6) |
9.4(5.1) |
9.1(4.8) |
年齢n(%) | |||
6歳未満 | 12(27.9) |
12(27.3) |
24(27.6) |
6歳以上 | 31(72.1) |
32(72.7) |
63(72.4) |
性別n(%) | |||
男性 | 23(53.5) |
27(61.4) |
50(57.5) |
女性 | 20(46.5) |
17(38.6) |
37(42.5) |
人種n(%) | |||
白人 | 23(53.5) |
29(65.9) |
52(59.8) |
黒人又はアフリカ系米国人 | 1(2.3) |
2(4.5) |
3(3.4) |
アジア人 | 2(4.7) |
1(2.3) |
3(3.4) |
その他・不明 | 17(39.5) |
12(27.3) |
29(33.4) |
BMI(kg/m2) | |||
平均値(SD) | 17.3(2.7) |
19.1(4.9) |
18.2(4.0) |
痙攣発作回数(28日間あたり) | |||
平均値 | 27.9 | 21.6 | ― |
中央値 | 14.0 | 10.7 | ― |
(最小値, 最大値) | (2.7, 213.3) | (2.7, 162.7) |
SD:標準偏差、BMI:Body Mass Index[体重(kg)/身長(m)2]
抗てんかん薬の併用状況と全体の15%以上の患者が併用していた薬剤
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
合計 (n=87) |
|
---|---|---|---|
抗てんかん薬の併用数 | |||
2種類 | 1(2.3) |
1(2.3) |
2(2.3) |
3種類 | 19(44.2) |
26(59.1) |
45(51.7) |
4種類 | 16(37.2) |
16(36.4) |
32(36.8) |
5種類 | 7(16.3) |
1(2.3) |
8(9.2) |
スチリペントール | 43(100) |
44(100) |
87(100) |
クロバザム | 40(93.0) |
42(95.5) |
82(94.3) |
バルプロ酸全般 | 32(74.4) |
34(77.3) |
66(75.9) |
バルプロ酸ナトリウム | 17(39.5) |
16(36.4) |
33(37.9) |
バルプロ酸セミナトリウム | 8(18.6) |
9(20.5) |
17(19.5) |
バルプロ酸 | 7(16.3) |
9(20.5) |
16(18.4) |
トピラマート | 14(32.6) |
7(15.9) |
21(24.1) |
データ表示方法:例数(%)
有効性
- ①T+M期の平均痙攣発作回数(28日間あたり)のベースラインからの変化 vs. プラセボ群
(主要評価項目)
T+M期におけるベースラインからの痙攣発作回数の変化率(95%CI)は、プラセボ群と比較して、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群は54.0%(35.6, 67.2)の低下であり、統計学的な有意差が示された(p<0.001、ANCOVA)。
T+M期における平均痙攣発作回数のベースラインからの変化率 vs. プラセボ群(mITT集団)
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
|
---|---|---|
痙攣発作回数(28日間あたり) :LS Mean |
7.0 | 15.1 |
痙攣発作回数の変化量 :中央値 |
-4.3 | -0.4 |
痙攣発作回数の変化率 vs プラセボ群 (95%CI)a |
-54.0%(-67.2, -35.6) | - |
p値b vs プラセボ群 | <0.001 | - |
T+M期:漸増期(T期)3週間及び維持期(M期)12週間の合計最長15週間、LS Mean:最小二乗平均値、CI:信頼区間
ベースライン期及びT+M期の値を反応変数としたANCOVAモデルを用いて解析した。対数が0になるのを避けるため、対数換算の前にM期及びT+M期の値に1を追加した。
- a: 次の式により対数スケールでのLS Meanから得られた値:100×[1-exp(フェンフルラミンのLS Mean–プラセボのLS Mean)]。
- b: 投与群及び年齢グループ(6歳未満、6歳以上)を因子、ベースラインの痙攣発作回数(28日間あたり)の対数換算値を共変量、T+M期の痙攣発作回数(28日間あたり)の対数換算値を反応変数としたANCOVAモデルを用いて解析し、このモデルによりp値を得た。
- ②T+M期の50%以上レスポンダー率(副次評価項目)
痙攣発作回数がベースラインから50%以上減少した患者割合は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で53.5%、プラセボ群で4.5%であり、プラセボ群と比較して、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で有意に高かった(p<0.001、ロジスティック回帰モデル)。
痙攣発作回数がベースラインから50%以上減少した患者割合(mITT集団)
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
|
---|---|---|
痙攣発作回数がベースラインから 50%以上減少した患者割合 |
53.5% | 4.5% |
オッズ比(95%CI) | 26.0(5.5, 123.2) | - |
p値a vs プラセボ群 | <0.001 | - |
CI:信頼区間
- a:ベースライン期の痙攣発作回数、治療群(プラセボ群又はフェンフルラミン群)、年齢層(6歳未満、6歳以上)を関数としたカテゴリー反応変数(50%減少達成又は未達成)を含むロジスティック回帰モデルで解析した。
- ③T+M期の痙攣発作の最長無発作期間(副次評価項目)
最長無発作期間の日数(中央値)は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で22.0日、プラセボ群で13.0日であり、プラセボ群と比較して、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で有意に長かった(p=0.004、Wilcoxon順位和検定)。
痙攣発作の無発作期間(mITT集団)
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
|
---|---|---|
痙攣発作の無発作期間 :中央値(最小値, 最大値) |
22.0日(3.0, 105.0) | 13.0日(1.0, 40.0) |
群間差中央値の推定値 (群間差の95%CI)a |
8.5(2.0, 15.0) | - |
p値b vs プラセボ群 | 0.004 | - |
CI:信頼区間
- a: Hodges-Lehmannによる群間差の推定値に基づく。
- b: Wilcoxon順位和検定
安全性
- ①有害事象
有害事象の発現率は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で97.7%(42/43例)、プラセボ群で95.5%(42/44例)であり、主な有害事象は下記の通りであった。
主な有害事象(いずれかの群で発現率が10%以上の事象を抜粋)
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
||
---|---|---|---|
発現例数 | 42(97.7) |
42(95.5) |
|
事象名 |
食欲減退 | 19(44.2) |
5(11.4) |
発熱 | 11(25.6) |
4(9.1) |
|
疲労 | 11(25.6) |
2(4.5) |
|
下痢 | 10(23.3) |
3(6.8) |
|
鼻咽頭炎 | 7(16.3) |
15(34.1) |
|
血中ブドウ糖減少 | 6(14.0) |
2(4.5) |
|
嗜眠 | 6(14.0) |
2(4.5) |
|
気管支炎 | 5(11.6) |
2(4.5) |
|
てんかん重積状態 | 5(11.6) |
0 |
|
振戦 | 5(11.6) |
0 |
|
痙攣発作 | 2(4.7) |
7(15.9) |
データ表記方法:例数(%)
重篤な有害事象は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で6例(てんかん重積状態3例、骨軟骨炎、嗜眠、痙攣発作が各1例)、プラセボ群で7例(痙攣発作4例、腹痛、発熱、ウイルス性胃腸炎、下気道感染、肺炎、全般性強直間代発作、群発発作が各1例)であった。
投与中止に至った有害事象は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で2例(食欲減退、運動失調、構語障害が各1例)、プラセボ群で1例(痙攣発作)であった。
死亡に至った有害事象はなかった。
- ②副作用
副作用(治験薬との因果関係のある有害事象)の発現率は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で72.1%(31/43例)、プラセボ群で34.1%(15/44例)であり、主な副作用は下記の通りであった。
主な副作用(いずれかの群で発現率が10%以上の事象を抜粋)
フェンフルラミン 0.4mg/kg/日群(n=43) |
プラセボ群 (n=44) |
||
---|---|---|---|
発現例数 | 31(72.1) |
15(34.1) |
|
事象名 |
食欲減退 | 17(39.5) |
5(11.4) |
疲労 | 7(16.3) |
2(4.5) |
|
嗜眠 | 6(14.0) |
2(4.5) |
データ表記方法:例数(%)
重篤な副作用は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で1例(嗜眠)、プラセボ群で1例(痙攣発作、群発発作)であった。
投与中止に至った副作用は、フェンフルラミン0.4mg/kg/日群で2例(食欲減退、運動失調、構語障害が各1例)、プラセボ群で0例であった。
死亡に至った副作用はなかった。
MedDRA version 19.0
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