安全性薬理試験及び毒性試験
1.安全性薬理試験(in vitro、イヌ、ラット)1,7)
- 1)社内資料:ピルトブルチニブの薬理試験
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
ピルトブルチニブの独立した安全性薬理試験として、in vitro hERG試験及びイヌを用いた心血管系安全性薬理試験を実施しました。また、イヌ及びラットを用いた反復投与毒性試験として、心血管系(イヌ1及び3ヵ月試験)、呼吸系(イヌ1ヵ月試験)及び中枢神経系(ラット1ヵ月試験)の安全性薬理評価項目を検討しました。
試験項目 | 動物種等 (n/群) |
試験法/ 投与方法等 |
試験濃度 又は用量 |
結果 |
---|---|---|---|---|
心血管系に及ぼす影響 | hERGチャネルを発現させたHEK293細胞(3) | hERGパッチクランプアッセイ in vitro |
0、3、10、30、100μM | HEK293細胞のhERGチャネルを阻害し、そのIC50値は32μM(15μg/mL)でした。 |
イヌ/ビーグル(雄4) | 心血管系安全性薬理試験(ラジオテレメトリー) 単回経口投与 |
0、5、20、60mg/kg (1、8、15、22日目投与) |
血行動態、心電図パラメータ及び体温への影響は認められませんでした。無影響量:60mg/kg。 | |
イヌ/ビーグル(雌雄各5) | 1ヵ月間反復投与毒性試験 1日2回28日間 反復強制経口投与 |
0、10/5、30/10、90/60mg/kg/回* | 中用量群で26日目に対照群と比較して6.3%(15ミリ秒)のQTc間隔の延長が認められました。血圧及び心拍数への影響は認められませんでした。 | |
イヌ/ビーグル(雌雄各4) | 3ヵ月間反復投与毒性試験 1日2回15週間 反復強制経口投与 |
0、0.5、2.5、5mg/kg/回 | 心電図パラメータへの影響は認められませんでした。 | |
呼吸系に及ぼす影響 | イヌ/ビーグル(雌雄各5) | 1ヵ月反復投与毒性試験 1日2回28日間 反復強制経口投与 |
0、10/5、30/10、90/60mg/kg/回* | 呼吸系の安全性薬理評価項目に対する影響は認められませんでした。 |
中枢神経系に及ぼす影響 | ラット/SD系(雌雄各15) | 1ヵ月反復投与毒性試験 1日2回28日間 反復強制経口投与 |
雄:0、50、150、500mg/kg/回 雌:0、20、60、 175mg/kg/回 |
中枢神経系の安全性薬理評価項目(機能観察総合評価法及び自発運動量)に対する影響は認められませんでした。 |
* 各群、試験途中で減量
2.毒性試験
(1)単回投与毒性(ラット、イヌ)7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
単回投与毒性試験は実施していませんが、ラット及びイヌを用いた反復経口投与毒性試験の初回投与後の結果並びにラットを用いたin vivo小核試験の結果に基づき、ピルトブルチニブの急性毒性及び概略の致死量を検討したところ、ラットでは急性症状として粗毛及び立毛が認められ、イヌでは急性症状は認められませんでした。また、経口投与における概略の致死量は、ラット及びイヌでそれぞれ2,000mg/kg超及び90mg/kg超と判断されました。
(2)反復投与毒性(ラット、イヌ)7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
動物種/系統 (n/群) |
投与経路 | 投与期間 | 用量 (mg/kg/日) |
無毒性量 (mg/kg/日) |
主な所見 |
---|---|---|---|---|---|
ラット/SD系 (雌雄各15) |
経口 | 28日間 +回復 28日間 |
雄:0*1、100、300、1,000 雌:0*1、40、120、350 |
雄:1,000 雌:350 |
≧100(雄)/40(雌):血中カリウム低値、血中ALT高値、脾臓重量低値、腸管膜リンパ節赤血球貪食・洞内赤血球、膵臓出血・混合細胞性炎症・腺房萎縮・線維化・色素沈着(雌雄)、体重増加量低値(雄) ≧300(雄)/120(雌):脾臓白脾髄リンパ球減少(雌雄)、体重低値(雄)、血中クロール高値、血中総タンパク低値(雌) 1,000/350:摂餌量低値(雄)、赤血球数・白血球数・好中球数・リンパ球数・好酸球数低値、腸管膜リンパ節リンパ球減少(雌) |
回復期間終了後:回復性あり | |||||
ラット/SD系 (雌雄各10) |
経口 | 3ヵ月間 | 雄:0*1、100、1,000 雌:0*1、120、600 |
雄:100 雌:600 |
≧100(雄)/120(雌):血中クレアチンキナーゼ・カリウム低値、脾臓重量低値・リンパ球数低値・細胞密度低下、血中・脾臓B細胞相対比率低値・T細胞相対比率高値、TDAR低値、リンパ節赤血球貪食、膵臓出血・腺房及びランゲルハンス島炎症・腺房萎縮・線維化・色素沈着(雌雄)、血中グロブリン低値、A/G比高値、膵臓腺房混合細胞性炎症(雌) 1,000(雄)/600(雌):血中総ビリルビン高値(雌雄)、体重低値、体重増加量低値、血中グロブリン低値、脾臓小型化、膵臓血管・血管周囲炎症(雄)、血中尿素窒素・総タンパク低値(雌) |
イヌ/ ビーグル (雌雄各5) |
経口 | 28日間 +回復 28日間 |
雌雄:0*1、20/10*2、 60/20*2、180/120*3 |
20/10*2 | 死亡又は屠殺例 180:雄5/5例、雌5/5例 脱水、体温上昇、粘液便、赤色便、体重・体重増加量・摂餌量低値、白血球数・血小板数低値、血中アルブミン低値、腸管膜リンパ節リンパ球減少、肺赤色化・混合細胞性炎症・出血、直腸混合細胞性炎症(雌雄)、盲腸赤色化・混合細胞性炎症・壊死・出血、骨髄細胞密度低下、直腸出血(雄)、活動性低下、肺隆起部位、結腸混合細胞性炎症・壊死・出血・腸重積(雌) 生存例 ≧20:血中フィブリノゲン・コレステロール高値、リンパ球数低値、脾臓白脾髄・腸管関連リンパ組織リンパ球減少、リンパ節赤血球貪食・洞内赤血球・混合細胞浸潤(雌雄)、赤血球数低値、胸腺リンパ球減少(雄) ≧60:嘔吐、無形便、好中球数・単球数低値(雌雄)、活動性低下(雄)、赤血球数・好酸球数低値、胸腺リンパ球減少(雌) |
回復期間終了後:回復性あり | |||||
イヌ/ ビーグル (雌雄各4) |
経口 | 3ヵ月間 | 0*1、1、5、10 | 5 | ≧1:血中B細胞絶対数及び相対比率低値・T細胞絶対数及び相対比率高値、TDAR低下、腸管関連リンパ組織リンパ系細胞密度低下(雌雄)、血中無機リン低値(雄) ≧5:赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット低値、腸管膜リンパ節リンパ系細胞密度低下(雌) 10:腸管膜リンパ節リンパ系細胞密度低下、角膜混濁・上皮有糸分裂増加・上皮過形成・上皮単細胞壊死・びらん・潰瘍・間質線維化・間質混合細胞浸潤(雄)、血中アルブミン・総タンパク低値(雌) |
*1 0.5%HPMC溶液
*2 一般状態の悪化により投与12日目から60mg/kg群を20mg/kg/日に減量したことを考慮し、投与11日目から20mg/kg群を10mg/kg/日に減量
*3 一般状態の悪化により投与6日目から120mg/kg/日に減量したが、忍容性が認められず投与13日目に全例屠殺
(3)遺伝毒性試験(in vitro、ラット)7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
細菌を用いた復帰突然変異試験(Ames試験)、ヒト末梢血リンパ球を用いたin vitro小核試験及びラットを用いたin vivo小核試験が実施されました。ヒト末梢血リンパ球を用いたin vitro小核試験において異数性誘発性に起因すると考えられる小核誘発性が認められたものの、ラットを用いたin vivo小核試験の結果は陰性でした。
- 遺伝毒性試験
-
試験の種類 試験系 代謝活性化
(処置)濃度又は用量 試験成績 in vitro Ames試験 ネズミチフス菌:TA98、TA100、TA1535、TA1537
大腸菌:WP2uvrAS9- 0*1、33.3、100、333、1,000、3,333、5,000μg/plate 陰性 S9+ 0*1、33.3、100、333、1,000、3,333、5,000μg/plate 小核試験 ヒト末梢血リンパ球 S9-
(4時間)0*1、50、120、150μg/mL 陽性 S9-
(24時間)0*1、5、12、16μg/mL 陽性 S9+
(4時間)0*1、50、100、225μg/mL 陽性 S9-
(24時間)0*1、1.25、2.5、5.0、12、16μg/mL 陽性*3 in vivo 小核試験 雌雄ラット(SD系)、単回経口、骨髄 0*2、250、500、1,000、2,000mg/mL 陰性 *1 DMSO
*2 0.5%HPMC溶液
*3 FISH法において、小核のセントロメア染色が高頻度で認められた。
(4)がん原性試験7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
ピルトブルチニブは進行癌患者の治療を目的とした抗悪性腫瘍剤であるため、がん原性試験は実施しませんでした。
(5)生殖発生毒性試験7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
ラット及びイヌを用いた反復投与毒性試験において、雌雄生殖器に対する影響は認められませんでした。
ラットを用いた胚・胎児発生に関する予備試験において、胎児に対する毒性所見として、腎臓、尿路、卵巣、子宮及び骨格の奇形、並びに腎臓、尿路及び骨格の変異が認められました。また、無毒性量は150mg/kg/日と判断され、当該用量を反復投与したときのピルトブルチニブの曝露量(AUC0-24h)は106,000ng・h/mLであり、臨床曝露量と比較して1.2倍でした。
- 胚・胎児発生に関する予備試験
-
試験系 投与期間
投与経路用量
(mg/kg/日)主な所見 無毒性量
(mg/kg/日)雌ラット
(SD系)妊娠6~17日
経口0*1、50、150、
750、1,000
母動物
1,000:なし胚・胎児
≧750:胎児体重低値、腎臓形態異常*2・小型化*2・乳頭欠損*3・乳頭小型化*3、尿管拡張*3
750:腎臓位置異常*2
1,000:全胚吸収、早期吸収胚数・後期吸収胚数・総吸収胚数・着床後胚損失率高値、腎臓欠損*2、尿管欠損*2、卵巣位置異常*2、子宮形態異常*2、胸骨分節形態異常*2、腰椎弓分離骨化部位*3母動物(一般毒性):1,000
胚・胎児:150
*1 0.5%HPMC溶液
*2 奇形所見
*3 変異所見
(6)その他の特殊毒性試験7)
- 7)社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験
- 1)光毒性試験(in vitro)
- ピルトブルチニブのin vitroにおける光毒性を、BALB/c 3T3マウス線維芽細胞を用いたニュートラルレッド取込み光毒性試験により検討しました[紫外線照射下(UVR+)/非照射下(UVR-)で処理、ピルトブルチニブ処理濃度0~178μg/mL]。その結果、本試験で検討した条件下において、ピルトブルチニブは光毒性を示しませんでした。
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