アルコール依存症と思われる
患者さんが来院されたら
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アルコール依存症患者では、多量飲酒を背景に、強い飲酒欲求を主体とする精神依存、離脱症状を主体とする身体依存が形成されているほか、精神・身体医学的障害を併発していることがあります。患者とその家族は、これらに伴う症状が顕著になってはじめて、かかりつけの内科医あるいは心療内科医(プライマリーケア医)に相談することが多いと思われます。
危険な飲酒と考えられる場合はブリーフ・インターベンション*が推奨されており、プライマリーケア医による早期介入が望まれます。うつや不安障害などの精神疾患を合併する場合や深刻なアルコール関連問題がある場合は専⾨医療機関の受診を促すことが大切です。
*ブリーフ・インターベンション:生活習慣の行動変容を目指す短期間の行動カウンセリング。
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患者への接し方
「褒める」、「共感する」、「励ます」など、患者が前向きな気持ちになれる関わりを心掛ける必要があります。
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アルコール依存症の診断
アルコール依存症の臨床診断としては、WHOの国際疾病分類による診断基準(ICD-10)がよく利用されています。
ICD-10による診断基準の詳細は、こちらをご参照ください。また、アルコール依存症の疑いがある患者を拾い上げる手段として、KASTやAUDITの質問紙法も有用です。正しく診断するためには、この他にも患者のライフスタイルや飲酒歴、身体症状所見等を総合的に判断する必要があります。
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専門医療機関への紹介
身体的、社会的に重大な問題を抱える重症アルコール依存症患者は、専門医療機関での治療が中心になると考えられます。重症度が高い、あるいは複雑な背景因子を持っている患者等、非専門医療機関での対応が困難と判断される場合は、積極的に専門医療機関への紹介を考慮してください。
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アルコール依存症患者を専門医療機関へ導くためには
アルコール依存症患者は、自身がアルコール依存症であることを否認する傾向が強く、専門医療機関の受診を拒むことも多いと考えられます。このような状況があるものの、患者とその家族には診断結果を正しく伝え、専門医療機関で適切な治療を受ける必要性を理解してもらわなければなりません。そのためには、アルコール依存症の治療の主体は心理社会的治療であること、抗酒薬等の薬物療法や、併発している臓器障害の治療だけでは本質的な改善は見込めないことをしっかり説明する必要があります。
また、専門医療機関の受診を促す際には、患者が足を運びやすい病院を具体的に提示するなどの配慮も大切です。