服薬指導のポイント
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レグテクトによる断酒治療のポイント
断酒補助剤『レグテクト錠』による断酒治療のポイントは以下のとおりです。
- ・断酒の意思のある患者が服薬すること
- ・心理社会的治療を受けながら服薬すること
- ・医師の指⽰通り服薬すること(1日3回服薬すること。自己判断で服薬を中止しないこと)
患者には、レグテクトを服⽤するだけで断酒が維持できるわけではなく、患者本⼈の断酒する意志が⼤切であり、服薬中も専⾨医療機関へ定期的に通院することが重要であることを説明してください。レグテクトをきちんと服薬してもらうためには、「薬の名前」、「薬の正しい飲み⽅」、「薬の働き」、「出現する可能性のある副作⽤とその対処法」をしっかり説明するとともに、副作⽤歴、アレルギー歴、妊娠の可能性の有無、他の薬の使⽤状況の有無などをチェックして適正使⽤を推進することが重要と考えられます。
患者説明用資材を作成しておりますので、ご要望の場合は、お手数ですが担当MRへお問い合わせください。 -
効能・効果、用法・用量と具体的指導について
【効能・効果】
- アルコール依存症患者における断酒維持の補助
【用法・用量】
- 通常、成人にはアカンプロサートカルシウムとして666mgを1日3回食後に経口投与する
●具体的指導内容
- ①1日3回、毎食後に2錠(666mg)を服用するようご指導ください。
- ・本剤の吸収は食事の影響を受けやすく、空腹時に投与すると、食後投与と比較して血中濃度が上昇するおそれがあります。本剤の有効性および安全性は食後投与により確認されているため、必ず食後に服用するようご指導ください。
- ・飲み忘れに気付いた場合は、飲み忘れた分は服用せず、次の服薬時から飲むようご指導ください。
レグテクトはアルコール依存で亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで神経伝達の均衡を徐々に回復して飲酒欲求を抑制すると考えられています。これは、本剤の服薬を一定期間続けることで期待できる効果です。そのため、もし、飲み忘れがあったとしても、その次から忘れないように留意してもらって、服薬を継続することが大切です。 - ・レグテクトの服用日記をご用意しておりますので、患者に使用を勧め、用法・用量を遵守し、断酒を継続するようご指導ください。なお、服用日記については大変お手数ですが担当MRへお問合せください。
- ②本剤は、腸溶性フィルムコーティング錠です。かんだり、割ったり、砕いて服用すると胃の中で薬が溶け、胃障害を引き起こす可能性がある
ことをお伝えいただき、そのまま服用するようご指導ください。
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薬剤の働き(レグテクトの作用機序)
レグテクトは、飲酒欲求につながる神経の過剰興奮を抑制する薬剤です。
アルコール依存では、中枢神経系の主要な興奮性神経であるグルタミン酸作動性神経の活動が亢進し、興奮性神経伝達と抑制性神経伝達の間に不均衡が生じるとかんがえられています。レグテクトは、アルコール依存で亢進したグルタミン酸作動性神経障害を抑制することで神経伝達の均衡を回復し、飲酒欲求を抑制すると推察されています。
一方、抗酒薬(ジスルフィラム、シアナミド)は、アセトアルデヒドデヒドログナーゼ(ALDH)を阻害することにより、飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度上昇による不快感を連想させることによって断酒を期待する薬剤です。そのため、抗酒薬は飲酒欲求そのものを標的としておらず、抗酒薬とレグテクトは異なる作用機序の薬剤です。
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副作用および重要な基本的注意と具体的指導について
【副作用】
アルコール依存症患者を対象とした国内臨床第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験において、安全性評価対象症例199例中37例(18.6%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢28例(14.1%)、傾眠、腹部膨満、嘔吐 各2例(1.0%)でした。(承認時)
<発現時期>下痢は投与開始4週までに多くみられる傾向がありました。(国内第Ⅲ相試験)
<転帰>下痢に関して、ほとんどの症例で、無処置または整腸剤投与などにより回復しました。【重要な基本的注意】
- 1.本剤は、アルコール依存症の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、投与すること。
- 2.本剤との因果関係は明らかではないが、自殺念慮、自殺企図等が報告されているので、本剤を投与する際には患者の状態を十分に観察するとともに、関連する症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 3.患者及びその家族等に自殺念慮、自殺企図等の行動の変化があらわれることのリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。
- 4.中等度の腎障害のある患者では、排泄遅延により血中濃度が上昇するおそれがあるので、減量を考慮するとともに、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。異常が認められた場合には、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。(電子添文「薬物動態」の項参照)
●具体的指導内容
- ①主な副作用として便がゆるくなる場合があります。また眠気や嘔吐、不安など異常を感じることがあればすぐに主治医に相談するようご指導ください。
- ②自殺に関連する有害事象は生命に関わる安全上重大な事項であり、本剤での治療において十分注意すべきと考えます。したがって、本剤の治療前には、患者の既往歴等から自殺企図について十分確認し、本剤での治療中には、患者の状態を十分に観察し、家族等への注意喚起等、患者の管理を慎重かつ十分に行うようにしてください。
- ③中等度の腎障害のある患者では減量が考慮されることがあるので、処方量に注意して異常が認められた場合は、すぐに主治医に相談するようご指導ください。
- ④高齢者においては血中濃度が上昇するおそれがあるので、減量が考慮されることがあります。患者の状態をよく観察し、異常が認められた場合には、すぐに主治医に相談するようご指導ください。
- ⑤妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。
また、授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止するようご指導ください。[ヒト母乳中への本剤の移行は不明であるが、動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されています。]
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他剤との併用について
相互作用が明らかな薬剤はありません。
また、アルコールにより影響を受けないことが示唆されています。●レグテクトとアルコールあるいは併用薬との薬物動態に関する検討
併用薬等 併用による影響 アルコール1),2) レグテクトの薬物動態及びアルコールの体内動態に影響しない
ジスルフィラム3) レグテクトの薬物動態に影響を及ぼさない
ジアゼパムの薬物動態については検討していないジアゼバム4) レグテクトの薬物動態に影響を及ぼさない
ジアゼパムの薬物動態については検討していないイミプラミン5) レグテクトおよびイミプラミンの薬物動態に影響しない
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レグテクトの適正使用(投与患者の選択)
●レグテクトの投与対象患者
投与対象は、以下の4項目すべてに該当する患者です。
- 1.国際疾病分類等の適切な診断基準に基いて、アルコール依存症と診断された者(表1参照)
- 2.心理社会的治療を受けている者
- 3.断酒の意志がある者
- 4.離脱症状がみられるときは、離脱症状に対する治療を終了した者(本剤は、離脱症状の治療薬ではない)
表1
国際疾病分類の診断基準6)
過去1年間のある期間、次の項目のうち3つ以上がともに存在した場合飲酒したいという強烈な欲求、強迫感(渇望) 節酒の不能(抑制喪失) 離脱症状 耐性の増大 飲酒や、その回復に1日の大部分の時間を消費し、飲酒以外の娯楽を無視(飲酒中心の生活) 精神的、身体的問題が悪化しているにもかかわらず、断酒しない(負の強化への抵抗) 上記のなかでも、特に心理社会的治療を受けている者が適応となることは、重要なポイントです。
アルコール依存症の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、心理社会的治療を実施している医療機関において使用してください。●禁忌・慎重投与の確認
【禁忌】
- 1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 2.高度の腎障害のある患者
⇒排泄遅延により、高い血中濃度が持続する恐れがあります。
【慎重投与】
- 1.軽度から中等度の腎障害のある患者(排泄遅延により血中濃度が上昇するおそれがあります)
- 2.自殺念慮または自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者(自殺念慮、自殺企図があらわれることがあります)
⇒本剤との因果関係は明確ではありません。自殺に関連する有害事象は生命に関わる安全上重大な事項であるため、本剤投与時に
十分注意すべき事項であると考え、設定しました。 - 3.高齢者(血中濃度が上昇するおそれがあります)
- 4.高度の肝障害のある患者(使用経験がありません)
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患者への接し方
アルコール依存症治療を受けている患者は、断酒してお酒中心の生活から健康的な家庭生活や社会生活を取り戻すことが目標です。治療中に飲酒するという再発のリスクが高い疾患ですので、「褒める」、「共感する」、「励ます」など、患者が前向きな気持ちになれるアドバイスを心掛けることが大切です。
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- 1)日本新薬株式会社 社内資料 : 海外第 Ⅰ 相 アルコールとの相互作用検討試験 -反復経口投与- (Lucker)
- 2)日本新薬株式会社 社内資料 : 海外第 Ⅰ 相 アルコールとの相互作用検討試験 -単回経口投与- (Dewland Ⅲ)
- 3)日本新薬株式会社 社内資料 : 海外第 Ⅰ 相 ジスルフィラムとの相互作用検討試験 -反復経口投与- (Dewland Ⅴ)
- 4)日本新薬株式会社 社内資料 : 海外第 Ⅰ 相 ジアゼパムとの相互作用検討試験 -反復経口投与- (Decourt Ⅰ)
- 5)日本新薬株式会社 社内資料 : 海外第 Ⅰ 相 イミプラミンとの相互作用検討試験 -反復経口投与- (Decourt Ⅱ)
- 6)薬物関連障害の診断・治療ガイドライン(2002)