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骨髄異形成症候群
適正使用ガイド

重大な副作用とその対策

1.骨髄抑制

  • 本剤は骨髄機能抑制作用を有しており、血小板減少症、好中球減少症、貧血があらわれることがあります。
  • 海外臨床第Ⅲ相試験と比較して、国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験においては、発現率が高く、かつ重症度が高い傾向が認められています。
  • 本剤投与前及び投与中は、血液検査(血球数算定、白血球分画測定等)を定期的に行ってください。
  • 患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、減量、休薬又は投与中止など、適切な処置を行ってください。
  • 治療開始前の白血球数、好中球数、血小板数に基づいて、投与量調節の基準を設定していますので(「2.血液学的検査値による投与量調節(休薬・減量基準ページ参照)」)、この基準を目安として、次サイクル以降の投与について適切に減量、治療開始の延期(休薬)を行ってください。
発現状況
血小板減少症、好中球減少症、貧血の発現状況を表1に示します。
表1/血小板減少症、好中球減少症、貧血aの発現状況
副作用 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験a(N=175)
全Grade Grade3以上 全Grade Grade3以上
血小板減少症 46 (86.8) 32 (60.4) 122 (69.7) 102 (58.3)
好中球減少症 44 (83.0) 43 (81.1) 115 (65.7) 107 (61.1)
貧血b 41 (77.4) 39 (73.6) 90 (51.4) 24 (13.7)
  1. 有害事象を対象とした。
  2. 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験では赤血球減少症、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット減少のいずれかを副作用として発現した被験者とした。

例数(%)

発現時期

国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験でGrade3以上の血小板減少症、好中球減少症、貧血が発現する時期を図1に示します。
いずれも、第1サイクルで最も多く発現していました。

図1/国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験でGrade3以上の血小板減少症、好中球減少症、貧血が発現する時期
貧血が発現する時期
国内外の臨床試験での血小板数、成熟好中球数及びヘモグロビン濃度のサイクル内での最低値の発現時期を表2に示します。国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験での発現時期は海外臨床第Ⅲ相試験と比較して、血小板数とヘモグロビン濃度はほぼ同じでしたが、成熟好中球数は遅くなっていました。
表2/血小板数、成熟好中球数、ヘモグロビン濃度の最低値のサイクル内での発現日
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験(N=175)
中央値(範囲)〔日〕 中央値(範囲)〔日〕
血小板数 17( 7‒ 89) 15( 1‒ 45)
成熟好中球数 25( 1‒ 70) 14( 1‒ 37)
ヘモグロビン濃度 17( 1‒161) 15( 1‒ 44)

対処法

患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、減量、休薬又は投与中止など、適切な処置を行ってください。
白血球減少症、好中球減少症、血小板減少症が発現した場合には、次サイクル以降の投与について「2.血液学的検査値による投与量調節(休薬・減量基準ページ参照)」の基準に従い、適切に減量、治療開始の延期(休薬)を行ってください。

2.感染症

  • 本剤の骨髄機能抑制作用に伴う易感染状態により、敗血症、肺炎等があらわれることがあります。
  • 患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行ってください。
発現状況

感染症関連事象は、国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験では53例中30例(56.6%)で認められました。また海外臨床第Ⅲ相試験では、175例中134例(76.6%)で認められました。
主な感染症関連事象を表3に示します。

表3/主な感染症関連事象の発現状況
副作用 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験a(N=175)
全Grade Grade3以上 全Grade Grade3以上
肺炎b 7 (13.2) 7 (13.2) 24 (13.7) 20 (11.4)
敗血症 2 (3.8) 2 (3.8) 7 (4.0) 7 (4.0)
敗血症性ショック 0 0 3 (1.7) 3 (1.7)
  1. 有害事象を対象とした。
  2. 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験は真菌性肺炎2例(Grade 2:1例、Grade 3:1例)、海外臨床第Ⅲ相試験は真菌性肺炎及び細菌性肺炎各1例(いずれもGrade3)を含む。

例数(%)

対処法

患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行ってください。
Grade3以上の有害事象が認められた場合は、「1.Grade3以上の非血液毒性(休薬・減量基準ページ参照)」を参考に、治療開始の延期(休薬)等を行ってください。

3.出血

  • 脳出血、頭蓋内出血、消化管出血、眼出血、血尿、処置後出血等があらわれることがあります。
  • 本剤投与前及び投与中には、定期的に血小板数を検査し、血小板減少に伴う出血性の副作用の発現に注意してください。
  • 患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行ってください。
発現状況
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験では出血性の副作用の発現率は45.3%(24/53例)であり、Grade3以上の副作用は認められませんでした。
海外臨床第Ⅲ相試験では出血性の有害事象の発現率は52.6%(92/175例)でした。Grade3以上の主な(3例以上)有害事象はGrade4の脳出血(2.3%;4/175例)、Grade3の鼻出血(5.1%;9/175例)、血尿(2.3%;4/175例)、歯肉出血(1.7%;3/175例)及び直腸出血(1.7%;3/175例)でした。
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験及び海外臨床第Ⅲ相試験での出血性の有害事象発現時の血小板数のGradeを表4及び5に示します(海外臨床第Ⅲ相試験はGrade3以上の出血性事象発現時)。
出血性の有害事象発現時、血小板数は多くがGrade3又は4でした。
表4/国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験での出血性の有害事象発現時の血小板数Grade
血小板数のGrade
0 1 2 3 4 合計
出血性の有害事象の
Grade
1 21(25.6) 4(4.9) 5(6.1) 15(18.3) 37(45.1) 82(100)
2 2(22.2) 1(11.1) 2(22.2) 0 4(44.4) 9(100)
3 0 0 0 0 0 0
4 0 0 0 0 0 0
23(25.3) 5(5.5) 7(7.7) 15(16.5) 41(45.1) 91(100)

件数(%)

表5/海外臨床第Ⅲ相試験でのGrade3以上の出血性の有害事象発現時の血小板数Grade
血小板数のGrade
0 1 2 3 4 合計
出血性の有害事象の
Grade
3 4(9.1) 3(6.8) 3(6.8) 28(63.6) 6(13.6) 44(100)
4 0 0 0 5(71.4) 2(28.6) 7(100)
3/4 4(7.8) 3(5.9) 3(5.9) 33(64.7) 8(15.7) 51(100)

件数(%)

対処法

患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行ってください。
本剤投与前及び投与中には、定期的に血小板数を検査し、血小板減少に伴う出血性の副作用の発現に注意してください。
Grade3以上の有害事象が認められた場合は、「1.Grade3以上の非血液毒性(休薬・減量基準ページ参照)」を参考に、治療開始の延期(休薬)等を行ってください。

4.腎尿細管性アシドーシス

  • 腎尿細管性アシドーシスがあらわれることがあります。
  • 定期的に血清重炭酸塩(静脈血)、腎機能パラメータ(BUN、クレアチニン等)の推移を確認してください。[「7.3 治療中の注意事項(適正使用ガイドP.17参照)」]
  • 異常が認められた場合には、適切な処置を行うとともに、「3.腎機能及び血清電解質による投与量調節(休薬・減量基準ページ参照)」の基準を目安に次サイクルでの減量及び治療開始の延期(休薬)を行ってください。
発現状況
国内外の臨床試験における腎尿細管障害関連事象の発現状況を表6に示します。なお、適応外使用ではありますが、本剤とエトポシドを併用した慢性骨髄性白血病(CML)患者5例に腎尿細管性アシドーシスが認められたという報告1)2)があります。
  • 1)Schiffer CA, DeBellis R, Kasdorf H, Wiernik PH. Treatment of the blast crisis of chronic myelogenous
    leukemia with 5-azacitidine and VP-16-213. Cancer Treat Rep. 1982;66:267-71.
  • 2)Schiffer CA, Anderson K, Coleman M, Cuttner J. Therapy for chronic myelogenous leukemia in blast
    crisis with etoposide and 5-azacitidine administered by continuous infusion: a Cancer and Leukemia
    Group B study. Cancer Treat Rep. 1985;69:1027-8.
表6/腎尿細管障害関連事象の発現状況
副作用 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験a(N=175)
全Grade Grade3以上 全Grade Grade3以上
腎尿細管障害 1(1.9) 0 0 0
腎機能障害 0 0 1(0.6) 0
腎不全b 1(1.9) 0 4(2.3) 2(1.1)
血中重炭酸塩減少 4(7.5) 0 2(1.1) 0
BUN増加 7(13.2) 0 0 0
血中クレアチニン増加c 6(11.3) 0 2(1.1) 0
低カリウム血症d 5(9.4) 3(5.7) 11(6.3) 3(1.7)
  1. 有害事象を対象とした。
  2. 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験は急性腎不全1例を含む。
  3. 海外第Ⅲ相試験は高クレアチニン血症1例を含む。
  4. 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験は、血中カリウム減少2例(うちGrade3以上1例)を含む。

例数(%)

CTCAE ver.3.0又はNCI-CTC ver.2.0でGradeが規定されているクレアチニンと重炭酸塩について、臨床試験でのGradeの変動を表7に示します。国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験では治療開始後にクレアチニンと重炭酸塩がGrade 3以上に変動した患者はいませんでした。

表7/臨床試験でのクレアチニンと重炭酸塩の変動
治療開始前
のGradea
治療開始後のGradea
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験(N=175)
0-2 3 4 0-2 3 4
重炭酸塩 0-2 53(100) 0 0 169(98.3) 3(1.7) 0
クレアチニン 0-2 53(100) 0 0 171(99.4) 1(0.6) 0
  1. 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験:CTCAE ver.3.0、海外第Ⅲ相試験:NCI-CTC ver.2.0

例数(%)

発現時期
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験で血中重炭酸塩減少、BUN増加、血中クレアチニン増加の副作用の発現時期を図2に示します。
重炭酸塩減少を発現した患者数は少ないものの、8サイクルまでは全サイクルで認められました。BUN増加、血中クレアチニン増加については9-10サイクルの投与患者数が少ないため発現率が高くなっていますが、発現した患者数はいずれも1例のみでした。
なお、同じ患者で複数回発現している傾向が認められました。
図2/国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験での血中重炭酸塩減少、BUN増加、血中クレアチニン増加の発現時期
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験での血中重炭酸塩減少、BUN増加、血中クレアチニン増加の発現時期

対処法

定期的に血清重炭酸塩(静脈血)、腎機能パラメータ(BUN、クレアチニン等)の推移を確認してください。[「7.3 治療中の注意事項(適正使用ガイドP.17参照)」]
異常が認められた場合には、適切な処置を行うとともに、「3.腎機能及び血清電解質による投与量調節(休薬・減量基準ページ参照)」を参考に次サイクルでの減量又は治療開始の延期(休薬)を行ってください。

※参考までに、国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験で、本剤との因果関係が否定できない腎尿細管障害が認められた症例の経過を以下に示します。

経過
患者は60歳男性で糖尿病を合併していた。第1サイクルの3日目に血中リン減少(Grade3)が発現したが、アザシチジンの投与は継続された。36日目には血中重炭酸塩減少(Grade1)が発現した。第2サイクルよりβ2-マイクログロブリンの測定が行われた結果、測定値に変動はなかった。血中リン減少に対しては第2サイクルよりリン酸塩の経口投与が開始された。
本症例で認められた腎尿細管障害関連事象
副作用 発現時サイクル 程度 重篤度 発現日a 転帰日数b 転帰
腎尿細管障害 1 Grade1 非重篤 3 197 未回復c
血中リン減少 1 Grade3 非重篤 3 194 未回復c
血中尿酸減少 1 Grade1 非重篤 3 196 未回復c
尿蛋白陽性 1 Grade2 非重篤 15 172 未回復c
血中クロール増加 1 Grade1 非重篤 22 177 回復
血中重炭酸塩減少 1 Grade1 非重篤 36 158 回復
尿中血陽性 1 Grade1 非重篤 36 151 回復
  1. 発現日は有害事象発現時のサイクルでの発現日を示す。
  2. 発現日を1日として転帰までの日数を算出した。
  3. 治験終了後に他治療に移行し、追跡調査不要と判断されたため。

5.低血圧

  • 起立性低血圧、低血圧があらわれることがあります。
  • 患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、治療開始の延期(休薬)など、適切な処置を行ってください。
発現状況
国内外の臨床試験における低血圧の発現状況を表8に示します。
国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験では低血圧は認められませんでした。海外臨床第Ⅲ相試験では、12例(6.9%)に認められ、Grade3以上の低血圧は3例(1.7%)に認められましたが、治験の中止や中断に至った事象はありませんでした。
表8/低血圧の発現状況
副作用 国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験(N=53) 海外臨床第Ⅲ相試験a(N=175)
全Grade Grade3以上 全Grade Grade3以上
低血圧 0 0 10(5.7) 3(1.7)
起立性低血圧 0 0 2(1.1) 0
  1. 有害事象を対象とした。

例数(%)

対処法

患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行ってください。
特に降圧薬使用中の患者については、本剤投与前及び投与中には、定期的に血圧を測定する等、血圧低下など有害事象の発現に注意してください。
Grade3以上の有害事象が認められた場合は、「1.Grade3以上の非血液毒性(休薬・減量基準ページ参照)」を参考に、治療開始の延期(休薬)等を行ってください。

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