日本人骨髄異形成症候群患者(9名)にアザシチジン75mg/m2を1日1回7日間(28日毎)皮下投与又は10分かけて点滴静注し、1サイクルと2サイクルの投与経路をクロスオーバーして、各サイクル1日目の血漿中未変化体濃度を測定し、薬物動態パラメータを求めた。
皮下投与のCmax(tmax)は1,120±210ng/mL(0.361±0.253時間)であり、点滴静注では4,170±1,850ng/mL(0.158±0.028時間)であった。また、皮下投与のt1/2,βは1.05±0.61時間であり、点滴静注では0.441±0.041時間であった。皮下投与後を点滴静注後と比較するとCmaxは約1/3に、t1/2,βは約2倍となった。AUC0-∞は皮下投与及び点滴静注でそれぞれ1,180±250ng・h/mL及び1,440±520ng・h/mLであった。AUC0-∞の比較により算出した皮下投与時のバイオアベイラビリティ(BA)は91.1%であった。
N | Dose (mg/m2) |
平均値±標準偏差 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cmax (ng/mL) |
tmax (h) |
AUC0-∞ (ng・h/mL) |
t1/2,β (h) |
BA (%) |
|||
皮下投与 | 9 | 75 | 1,120±210 | 0.361±0.253 | 1,180±250 | 1.05±0.61 | 91.1a (80.7〜103) |
点滴静注(10分間) | 9 | 75 | 4,170±1,850 | 0.158±0.028 | 1,440±520 | 0.441±0.041 | - |
平均値±標準偏差
a)幾何平均、括弧内は90%信頼区間(N=8)
外国人骨髄異形成症候群患者(6名)にアザシチジン75mg/m2を1日1回3日間皮下投与又は投与後の生理食塩液による洗浄を含め11分かけて点滴静注した。1サイクルと2サイクルの投与経路をクロスオーバーして(休薬期間:7〜28日間)、血漿中未変化体濃度を測定し、薬物動態パラメータを求めた。
皮下投与のCmaxは750.0±403.3ng/mLであり、点滴静注では2,750.0±1,069.0ng/mLであった。AUC0-∞は皮下投与及び点滴静注でそれぞれ960.5±458.1ng・h/mL及び1,044.3±285.7ng・h/mLであった。AUC0-∞の比較により算出した皮下投与時のバイオアベイラビリティ(BA)は88.6%であった。また、皮下投与のt1/2は0.69±0.14時間であり、点滴静注では0.36±0.02時間であった。
N | Dose (mg/m2) |
平均値±標準偏差 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
Cmax (ng/mL) |
AUC0-∞ (ng・h/mL) |
t1/2 (h) |
BA (%) |
|||
皮下投与 | 6 | 75 | 750.0±403.3 | 960.5±458.1 | 0.69±0.14 | 88.6a (70.2〜111.9) |
点滴静注(10分間) | 6 | 75 | 2,750.0±1,069.0 | 1,044.3±285.7 | 0.36±0.02 | - |
平均値±標準偏差
a)幾何平均、括弧内は90%信頼区間(N=6)
皮下投与、点滴静注ともに、未変化体の平均血漿中濃度推移は、海外試験と国内試験で類似していた。また、海外試験と国内試験の薬物動態パラメータを、採血時間等の条件を調整して比較した。その結果、皮下投与、点滴静注ともに、日本人と外国人のCmax、AUC0-∞に大きな差は認められなかった。
重度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランスが30mL/分未満)にアザシチジン75mg/m2を1日1回5日間皮下投与したときの1日目と5日目のCmax及びAUC0-∞は、腎機能正常患者(クレアチニンクリアランスが80mL/分以上)と比べて1日目はそれぞれ1.4倍及び1.7倍、5日目は1.1倍及び1.4倍であった。24)
N | Dose (mg/m2) |
平均値[相対標準偏差] | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) | t1/2( h) | ||||||
1日目 | 5日目 | 1日目 | 5日目 | 1日目 | 5日目 | |||
健常人a | 6 | 75 | 746 [57.9] |
633 [45.8] |
946 [39.0] |
857 [9.94] |
1.2 [102.6] |
1.0 [77.0] |
重度腎機能障害患者b | 6 | 75 | 1,057[93.0] | 668[91.6] | 1,574[63.5] | 1,211[49.1] | 1.0[43.9] | 1.2[53.9] |
平均値[相対標準偏差]
a)クレアチニンクリアランス≧80mL/分、b)クレアチニンクリアランス<30mL/分
日本人骨髄異形成症候群患者と外国人骨髄異形成症候群患者において、皮下投与と点滴静注の体内動態から、本剤皮下投与時のバイオアベイラビリティ(BA)を求めた。その結果、日本人の皮下投与時のBAは91.1%、外国人では88.6%であり、日本人と外国人の本剤皮下投与時のBAに大きな差は認められなかった。
外国人骨髄異形成症候群患者において、点滴静注後の本剤の平均分布容積は76±26L(0.99±0.34L/kg)であった33,34)。
本剤の血清中タンパク結合率を測定するために、ヒト血清を用いて[14C]-アザシチジンのin vitroタンパク結合率を限外濾過法で測定したところ、ヒト血清タンパク結合率は0.1、1及び10μg/mLの濃度で7.42~8.79%であり、濃度依存性は認められなかった35)。
ヒトに投与した際のアザシチジンの代謝は検討されていない。
アザシチジンは加水分解と脱アミノ反応による代謝経路が考えられている。ヒト肝S9画分においては、加水分解物であるN-ホルミルグアニルリボシルウレア(RGU-CHO)及びグアニルリボシルウレア(RGU)、並びにその脱アミノ体であるホルミルリボフラノシルビウレット及びリボフラノシルビウレットの生成が確認された36)。
また、脱アミノ反応では、主にシチジンデアミナーゼの触媒により、アザシチジンからアザウリジンへ代謝される37)。
本剤及びその代謝物は主に尿中に排泄されると考えられている。外国人癌患者に14C-アザシチジンを皮下投与及び点滴静注した場合、投与後48時間までの放射能の尿中排泄率はそれぞれ50%及び85%であり、糞中排泄率は1%未満であった38,39)。
外国人骨髄異形成症候群患者において、皮下投与後の見かけのクリアランスは167±49L/h、点滴静注後の全身クリアランスは147±47L/hであった34)。
ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro酵素阻害実験から、アザシチジンはヒトチトクロームP450の主要なアイソザイムであるCYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4を阻害しなかったが、100μmol/LでCYP1A2及びCYP2E1をそれぞれ19.4%及び27.1%阻害した40)。同様に、ヒト初代培養肝細胞を用いたin vitro酵素誘導実験から、CYP1A2、CYP2C19、及びCYP3A4/5を誘導しなかった40)。
ヒトP-糖タンパク質(P-gp)を発現させたLLC-PK1細胞を用いて、アザシチジンの膜透過性及びP-gpが関与する相互作用を検討した。アザシチジンはP-gpの基質ではないことが確認できた41)。またP-gpの基質であるジゴキシンの膜透過性に影響を与えなかったことにより、P-gpを阻害することはないと考えられた。
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