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安全性薬理試験及び毒性試験

安全性薬理試験

1.中枢神経系に及ぼす影響(ラット)65)
  • 65)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの安全性薬理試験

ラットにアザシチジンを静脈内投与(10分間持続注入)したところ、10mg/kg(60mg/m2)では中枢神経系に明らかな作用は認められなかったが、20mg/kg(120mg/m2)以上では中枢抑制的な症状が認められた。しかしながら、種々の症状の発現時間は投与開始後4時間以降であり最高血漿中濃度到達時間(tmax;10分〔投与終了時〕)から大きく乖離していたため、アザシチジンの中枢抑制的な症状は中枢神経系に直接作用したのではなく、その細胞傷害性のために引き起こされた二次的な作用と考えられた。

2.心血管系に及ぼす影響(イヌ、in vitro65)
  • 65)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの安全性薬理試験

イヌにアザシチジンを静脈内投与(10分間持続注入)したところ、2mg/kg(40mg/m2)以上で心拍数増加作用を示し、4mg/kg(80mg/m2)以上の用量で血圧を有意に低下させた。心血管系に対する直接作用について検討するため、アザシチジンをモルモット摘出右心房標本、ラット摘出血管標本及びモルモット摘出灌流心臓標本に適用したところ、アザシチジンは自発拍動数を増加させず、また血管弛緩作用も示さなかった。したがってアザシチジンは心血管系に対して直接作用を示さないと考えられた。イヌ心電図に対しては、アザシチジンは2mg/kg(40mg/m2)以上で心拍数の増加に伴うPR間隔の短縮及びQTcの延長作用を示したが、このQTc延長は心拍数が顕著に増加したことによる過補正によるものであり、さらに嘔吐や下痢によって引き起こされた血清電解質異常(カルシウム及びカリウムの低下)が関与しているものと考えられた。

3.呼吸系に及ぼす影響(ラット)65)
  • 65)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの安全性薬理試験

ラットに10mg/kg(60mg/m2)〜40mg/kg(240mg/m2)のアザシチジンを静脈内投与(10分間持続注入)したところ、投与開始後4時間で用量非依存性の1回換気量及び1分間換気量の増加が認められた。一方、投与開始後24時間には20mg/kg(120mg/m2)以上で1分間呼吸数の減少が、投与開始後48時間には40mg/kg(240mg/m2)で1分間換気量の減少が認められた。アザシチジンの投与により呼吸機能は促進後、抑制という二相性の変化を示したが、静脈内投与にも関わらず、これら呼吸機能変化の発現時間が投与開始後4時間及び24時間以降であることから、アザシチジンが呼吸系に直接作用したのではなく、その細胞傷害性によって引き起こされた二次的な作用であると考えられた。

毒性試験

1.単回投与毒性試験(マウス、ラット、イヌ)66)
  • 66)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの毒性試験

マウスにおける静脈内投与及び腹腔内投与での最小致死量はほぼ同程度で、経口投与での値はこれらの約5倍であった。単回の静脈内投与による各動物種の最小致死量は、体表面積換算した場合いずれも同程度であった。主要な毒性標的器官は骨髄、リンパ系器官、肝臓、腎臓並びに消化管であり、各動物で見られた変化に大きな質的相違は認められなかった。

動物種 投与経路 最小致死量 一般所見及び病理学的所見
マウス 静脈内 79.2mg/kg(237.6mg/m2 活動性低下、体重増加抑制、肝細胞・腎尿細管の退行性変化
経口 431mg/kg(1,293mg/m2
腹腔内 99.7mg/kg(299.1mg/m2
ラット 静脈内 41.0mg/kg(246.0mg/m2 体重増加抑制、肝細胞の退行性変化
イヌ 静脈内 13.3mg/kg(266.0mg/m2 体重減少、反応性低下、骨髄・リンパ系器官・肝細胞・腎尿細管・消化管の退行性変化
2.反復投与毒性試験(マウス、イヌ、サル)66)
  • 66)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの毒性試験
マウスにおける試験

マウスを用いた5日間反復投与毒性試験における無毒性量(NOAEL)及び最大耐量(MTD)は、静脈内投与ではそれぞれ6.5mg/kg(19.5mg/m2)未満及び8.2mg/kg(24.6mg/m2)、経口投与では共に3.0mg/kg(9.0mg/m2)未満、腹腔内投与では共に1.1mg/kg(3.3mg/m2)未満であった。

投与経路 無毒性量(NOAEL) 最大耐量(MTD)
静脈内(5日間) <6.5mg/kg(19.5mg/m2 8.2mg/kg(24.6mg/m2
経口(5日間) <3.0mg/kg(9.0mg/m2 <3.0mg/kg(9.0mg/m2
腹腔内(5日間) <1.1mg/kg(3.3mg/m2 <1.1mg/kg(3.3mg/m2
イヌにおける試験
①イヌを用いた5日間反復静脈内投与毒性試験では、4.4mg/kg投与群で体重減少並びに白血球数、赤血球数、ALT、AST及びBUNの増加の他、骨髄及びリンパ系器官の萎縮性変化、肝細胞のグリコーゲン減少、変性及び壊死並びに気管支肺炎等が観察され、投与開始4日目に死亡が認められた。投与期間中あるいは回復期間中(45~46日間)の検査で認められた血液学的変化は回復期間終了時にはおおむね回復性が認められた。投与期間終了時あるいは回復期間終了時の病理組織学的検査では、骨髄、リンパ系器官、肝臓、腎臓等に変化が認められた。
②イヌに5日間反復静脈内投与した後、9日間の休薬期間をおき、さらに同用量を5日間反復静脈内投与した試験では、1.1mg/kg投与群で体重減少、赤血球数、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の減少、ALTの増加並びに肝臓及び腎臓の重量増加の他、骨髄及びリンパ系器官の萎縮性変化、肝細胞のグリコーゲン減少及び壊死並びに消化管の粘膜下組織の炎症等が観察され、投与開始15日目(2サイクル目の投与初日)に死亡が認められた。投与期間中あるいは回復期間中(31日間)の検査で認められた血液学的変化は回復期間終了時にはおおむね回復性が認められた。投与期間終了時あるいは回復期間終了時の病理組織学的検査では、骨髄、肝臓等に変化が認められた。休薬期間を設けた2サイクルの反復投与により観察された変化は、5日間(1サイクル)の反復投与において認められた変化とほぼ同質であった。
③イヌの2日間経口投与忍容性試験では、カプセル0.8mg/kg及び腸溶錠5mg/匹投与群で嘔吐、粘液便並びに体重減少が認められたが、死亡は認められなかった。
④イヌの2週間反復経口投与毒性試験では、全投与群(カプセル投与群0.2、0.4及び0.8mg/kg並びに腸溶錠投与群5mg/匹)で白血球数及び網状赤血球数の減少、骨髄及び胸腺の萎縮性変化等を示し、0.8mg/kg及び5mg/匹投与群では一般状態が著しく悪化したため、全例が投与期間中あるいは休薬期間中に死亡もしくは瀕死期安楽殺処分となった。また、0.4mg/kg投与群もこれらの変化の他に赤血球数の減少や脾臓の萎縮性変化等を示し、同様に休薬期間中に過半数が死亡もしくは瀕死期安楽殺処分となった。0.2mg/kg投与群では見られた変化はおおむね回復性を示した。
投与経路 無毒性量(NOAEL) 最大耐量(MTD)
①静脈内(5日間) 0.28mg/kg(5.6mg/m2 2.2mg/kg(44.0mg/m2
②静脈内(5+5日間) <0.28mg/kg(5.6mg/m2 0.55mg/kg(11.0mg/m2
③経口(2日間) <0.8mg/kg(16.0mg/m2 0.8mg/kg(16.0mg/m2
④経口(2週間) <0.2mg/kg(4.0mg/m2 0.2mg/kg(4.0mg/m2
サルにおける試験
サルに14日間反復静脈内投与した試験では2.2mg/kg投与群でALT、AST及びBUNの増加並びに脾臓の重量減少の他、骨髄及びリンパ系器官の萎縮性変化並びに肝細胞及び腎臓の変性等を示し、投与開始9日目及び15日目(最終投与の翌日)に死亡が認められた。投与期間中あるいは回復期間中(32日間)の検査で認められた血液学的変化は回復期間終了時にはおおむね回復性が認められた。投与期間終了時には0.55mg/kg以上の投与群では肝細胞の変性等が認められ、回復期間終了時には1.1mg/kgを投与した個体で骨髄の赤芽球の減少及び肝細胞のグリコーゲン減少が認められたが、その他には特記すべき変化は認められなかった。
投与経路 無毒性量(NOAEL) 最大耐量(MTD)
静脈内(14日間) 0.28mg/kg(3.36mg/m2 1.1mg/kg(13.2mg/m2
3.遺伝毒性試験in vitro

非哺乳動物細胞系におけるin vitro試験67-72)として、ネズミチフス菌TA100株では20μg/plate以上の処理濃度で遺伝子突然変異を誘発した。ネズミチフス菌trpE8、trpE8 uvr、trpE8/pKM101の各菌株では1~10μg/plateで遺伝子突然変異を誘発した。ネズミチフス菌TM677株では1.0~10.0μmol/Lで遺伝子突然変異を誘発した。また、大腸菌WP14Pro−株では0.4及び4.0μg/mLで、WP3103P及びWP3104P株では5μg/plateで、CC103株では1~10μg/plateでそれぞれ遺伝子突然変異を誘発した。
一方、哺乳動物細胞系におけるin vitro試験69,73-76)として、ヒトリンパ芽球細胞株では0.1~10μmol/Lで、マウスリンパ腫細胞株では20ng/mL以上でそれぞれ遺伝子突然変異を誘発した。また、マウスリンパ腫細胞株では0.1~5μmol/Lで、Syrianハムスター胚由来線維芽細胞株では0.5~10μmol/Lでそれぞれ小核を誘発し、DNAへの取り込みを通じて染色体異常を誘発することが示された。さらに、マウス白血病細胞株では1~5μg/mLでDNA合成阻害及び細胞分裂阻害作用を示し、5μg/mLで染色体異常を誘発した。
これらの試験より、アザシチジンは遺伝子突然変異及び染色体異常を誘発することが示された。

  • 67)Marquardt H, Cancer, 40, pp1930-1934, 1977
  • 68)Podger DM, Mutat Res, 121, pp1-6, 1983
  • 69)Call KM, Mutat Res, 160, pp249-257, 1986
  • 70)Fučik V, Collection Czechoslov Chem Commun, 30, pp2883-2886, 1965
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  • 72)Watanabe M, Mutat Res, 314, pp39-49, 1994
  • 73)Amacher DE, Mutat Res, 176, pp123-131, 1987
  • 74)Stopper H, Mutat Res, 283, pp21-28, 1992
  • 75)Stopper H, Mutat Res, 300, pp165-177, 1993
  • 76)Li LH, Cancer Res, 30, pp2770-2775, 1970
4.がん原性試験(マウス、ラット、in vitro

マウスを用いたがん原性試験では、アザシチジンの2.2mg/kg(6.6mg/m2)を週3回52週間、あるいは2.0mg/kg(6.0mg/m2)を週1回50週間腹腔内投与した結果、造血器系、リンパ系器官、肺、乳腺及び皮膚等複数の組織に腫瘍発生率の増加が認められた29,30)。また、ラットを用いたがん原性試験(肝発がんプロモーション作用検討実験を含む)では、2.5mg/kg(15mg/m2)又は10mg/kg(60mg/m2)を週2回9ヵ月間腹腔内投与した結果、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、肺、精巣、皮膚(投与部位周囲)に対する発がん作用が認められた31)。一方、哺乳動物細胞系を用いた形質転換試験では0.25μg/mLで形質転換を誘発した32)。これらの試験より、アザシチジンががん原性を有することが示された。

  • 29)日本新薬株式会社 社内資料:NCI Carcinogenesis Technical Report Series, No.42(1978)
  • 30)Cavaliere A, Cancer Lett, 37, pp51-58, 1987
  • 31)Carr BI, Carcinogenesis, 5, pp1583-1590, 1984
  • 32)Benedict WF, Cancer Res, 37, pp2202-2208, 1977
5.生殖発生毒性試験(マウス、ラット)

雄マウスに3.0mg/kg(9.0mg/m2)又は雄ラットに2.5~5.0mg/kg(15.0~30.0mg/m2)をそれぞれ腹腔内投与した結果、精巣の重量減少、精細管精上皮の萎縮、多核巨細胞形成、配列不整、変性、脱落及びアポトーシス増加並びに精子数の減少等の雄生殖器への障害が認められ、雄マウスに3.3mg/kg(9.9mg/m2)又は雄ラットに2.5~5.0mg/kg(15.0~30.0mg/m2)をそれぞれ腹腔内投与した後にこれらの動物を無処置雌と交配させた結果、雌における吸収胚又は着床前死亡胚の増加、妊娠率の低下等の受胎能及び初期胚発生に対する影響が認められた26-28)。また、妊娠雌マウスに0.5~4.0mg/kg(1.5~12.0mg/m2)を、妊娠雌ラットに0.15~2.0mg/kg(0.9~12.0mg/m2)をそれぞれ腹腔内投与した結果、吸収胚の増加、胎児体重の低値あるいは奇形発現率の増加等の胚・胎児毒性及び催奇形性が認められた16-22)

  • 16)Schmahl W, Arch Toxicol, 55, pp143-147, 1984
  • 17)Svatá M, Experientia, 22, p53, 1966
  • 18)Langman J, Am J Anat, 132, pp355-374, 1971
  • 19)Takeuchi IK, J Anat, 140, pp403-412, 1985
  • 20)Webster W, Teratology, 9, A-40, 1974
  • 21)Cummings AM, Fundam Appl Toxicol, 23, pp429-433, 1994
  • 22)Rosen MB, J Toxicol Environ Health, 29, pp201-210, 1990
  • 26)Seifertová M, Neoplasma, 23, pp53-60, 1976
  • 27)Doerksen T, Biol Reprod, 55, pp1155-1162, 1996
  • 28)Doerksen T, Endocrinology, 141, pp3235-3244, 2000
6.局所刺激性試験(ウサギ)66)

ウサギの皮膚に0、1、3及び9%のアザシチジンを24時間塗布した結果、9%の塗布群で軽度の皮膚刺激性が認められた。

  • 66)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの毒性試験
7.抗原性試験(モルモット)66)

アザシチジン2.0及び4.0mg/kgの皮下投与による感作後に、アザシチジン1~100μg/部位の皮内投与による遅延型皮膚反応及び2mg/kgの腹腔内投与によるアナフィラキシー反応をそれぞれ検討した。その結果、両反応とも陰性であり、アザシチジンは抗原性を示さなかった。

  • 66)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの毒性試験
8.局所忍容性試験(ハムスター)66)

ハムスターを用いて、アザシチジンの1.0~21mg/mLを頬嚢に直接投与あるいは7.81~250mg/kgを頸静脈内投与することにより局所微小循環に対する影響を検討した。その結果、頬嚢への投与では3.5mg/mL以上で、頸静脈内投与では15.63mg/kg以上でそれぞれ微小血管内の血流量の減少が一過性に認められたが、いずれの試験においても血栓塞栓は認められなかった。

  • 66)日本新薬株式会社 社内資料:アザシチジンの毒性試験

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