遺伝子検査と遺伝カウンセリング
遺伝子検査について
ビルテプソ®の投与対象となるジストロフィン遺伝子の変異
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断は、ジストロフィン遺伝子変異の同定あるいはジストロフィンの欠損を確認することにより行われます。
ジストロフィン遺伝子は79個のエクソンからなる巨大遺伝子であり、国内の調査によるとDMDの遺伝子変異の内訳は単一又は複数エクソンの欠失が60%、エクソンの重複が8%、残りがナンセンス変異、スプライシング変異、1から数塩基の欠失・挿入等の微小変異です12)。
そのうち、エクソンスキッピングによる治療の対象となるのはジストロフィン遺伝子の単一又は複数のエクソンが欠失しているDMD患者です。ビルテプソ®の投与対象となるエクソン欠失のパターンについては「投与患者の選択」の「エクソン欠失パターンについて」をご確認ください。
また、一塩基多型(SNPs:single nucleotide polymorphisms)のデータベースdbSNPの情報から、稀ではありますが、ビルテプソ®の結合部位に4種類のSNPsの存在が確認されています(出現頻度1%未満)。(「Q&A」の「Q. ビルテプソ®結合部位の遺伝子多型について検査をする必要はありますか。」 参照)
12)Takeshima Y, et al.: J Hum Genet. 2010; 55: 379-88.
12)Takeshima Y, et al.: J Hum Genet. 2010; 55: 379-88.
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子診断
ジストロフィン遺伝子変異の同定は、Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification(MLPA)法、PCR法、シーケンス解析により行います(図5)。
遺伝子診断を行う際は、十分な遺伝カウンセリングのできる体制のもとで行うことが望ましいとされます。
図5 遺伝子診断のフロー
- Birnkrant DJ, et al.: Lancet Neurol. 2018; 17: 251-67.より改変
- Birnkrant DJ, et al.: Lancet Neurol. 2018; 17: 251-67.より改変
MLPA法とは
各エクソンに対応する特異プローブを標的遺伝子にハイブリダイゼーションさせた後に、PCR法により増幅し対照DNAと被検DNAのシグナル強度を比較することで、欠失や重複を確認することができます。
この方法により、全79エクソンの欠失・重複を迅速かつ高精度に同定することが可能です。DMD患者の約7割のジストロフィン遺伝子変異を同定することができます。
シーケンス解析とは
微小変異の同定は、ゲノムDNAを用いて全エクソン及び周辺のイントロンを含む領域のシーケンス解析によって行います。
- ・株式会社LSIメディエンス
[住所]〒105-0023 東京都港区芝浦一丁目2番地3号 シーバンスS館 8F
[お問い合わせ電話番号]03(5994)2111(臨床検査関係) - ・株式会社ビー・エム・エル
[住所]〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目21番3号(本社)
〒350-1101 埼玉県川越市的場1361番1号(総合研究所)
[お問い合わせ電話番号]03(6629)7386
[お問い合わせFAX番号]049(232)3132 - ・株式会社エスアールエル
[住所]〒107-0052 東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR(本社)
[お問い合わせ電話番号]03(6837)6344(SRLデータインフォメーション)
- ・公益財団法人かずさDNA研究所 かずさ遺伝子検査室
[住所]〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足二丁目5-23 バイオ共同研究開発センター2号室
[メールアドレス]onjk@kazusa.or.jp
[お問い合わせ電話番号]0438(52)3335(検体受領窓口専用ダイアル)
遺伝カウンセリングについて
遺伝カウンセリングとは
遺伝カウンセリングとは、遺伝性疾患の患者・家族又はその可能性のある人(クライエント)に対して、生活設計上の選択を自らの意思で決定し行動できるよう臨床遺伝学的診断を行い、遺伝医学的判断に基づき遺伝予後等の適切な情報を提供し、支援する医療行為です。遺伝カウンセリングにおいてはクライエントと遺伝カウンセリング担当者との良好な信頼関係に基づき、さまざまなコミュニケーションが行われ、この過程で心理的・精神的サポートがなされます。
遺伝カウンセリングにおける注意点
遺伝情報は、本人の体質や疾病の発症、重症度等に関わる情報が含まれていること、生涯変わらない情報であること、本人以外の血縁者の情報にもなること等の特徴があります。遺伝子検査を実施する際は、遺伝情報を知ること、知らないでいることに関する、それぞれメリット、デメリットを十分把握したうえで、クライエントの同意を得ることが不可欠です。さらに患者本人だけではなく、血縁者の遺伝子検査についても慎重に対応する必要があります。遺伝子検査での変異情報等が治療に直結するような場合は、その情報を知ることのメリットが明確です。しかし、その一方でまだ治療法が確立していない疾患に関しては、疾病の将来予測性に対してどのように対処すればよいか等、示された結果に対し本人及び家族等が大きな不安を持つ場合も多くみられます。
例えば、遺伝子変異を保有していることが明らかになった場合には結婚や妊娠・出産の決定に影響を与える可能性があります。そのため、それぞれの時期に特有の問題と家族関係等を十分に考慮した遺伝カウンセリングが必要になります。
遺伝子検査を実施する際は、遺伝子検査のメリット、デメリットをできる限り考慮してから実施する必要があります。