Dravet症候群を疑うべきポイント
Dravet症候群は難治で予後不良な疾患ですが、近年、新規治療薬の開発や発売が進んでいるため、早期に専門医に繋げることが重要です。
Dravet症候群を疑うべきポイント
- 1歳までに、
- 初めての発作が生後6ヵ月未満の場合
- 発症前は正常発達である場合
- 入浴や発熱時、ワクチン接種後に発作を認めた場合
- 片側けいれんを認めた場合
- 10分以上持続する発作を認めた場合
Dravet症候群の診断について
Dravet症候群は以下の症状や検査所見等から診断されます。
A. 症状
- 全身又は半身けいれん発作。
- 焦点性発作、ミオクロニー発作、非定型欠神発作、意識混濁発作。
- 発熱や入浴による誘発。
- 光や図形に対する過敏性の存在。
- けいれん重積ないしはけいれん発作の群発を起こしやすい。
B. 検査所見
- 血液・生化学的検査:特異的所見なし。
- 病理検査:特異的な所見なし。
- 画像検査:乳児期は正常だが、幼児期以後は非特異的大脳萎縮がみられる。海馬萎縮を伴うこともある。
- 生理学的検査:脳波では背景活動の徐波化、広汎性多棘徐波、多焦点性棘波が年齢に伴って消長する。
- 運動・高次脳機能検査:幼児期以後に中等度以上の知的障害が顕在化することが多く、神経学的にも失調や下肢の痙性を伴うことが多い。広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)がみられることもある。
C. 鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
複雑型熱性けいれん、全般てんかん熱性けいれんプラス、焦点てんかん、乳児ミオクロニーてんかん、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、PCDH19群発てんかん。
D. 遺伝学的検査
SCN1A遺伝子の変異等の検索をすすめる(ヘテロ変異を75%に、微小欠失を数%に認める)。
SCN1A遺伝子に変異等が認められない場合は、さらにSCN1B、SCN2A、GABRG2遺伝子も検索する。
<診断のカテゴリー>
1歳未満でA1を発症し、A2~5の特徴を1つ以上有する場合は本症候群を疑い、遺伝学的検査をもってDefinite(確定診断)とする。ただし、1歳未満でA1を発症し、A2~5の特徴を2つ以上有し、かつB3~5のうち1つ以上を有する場合は、遺伝子検査が陰性でもDefinite(確定診断)とする。
厚生労働省 概要・診断基準等及び臨床調査個人票 140 Dravet症候群より改変
SCN1A遺伝子異常1-5)
SCN1A遺伝子とは、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.1)αサブユニット1をコードする遺伝子のことで、Na+チャネルのNa+を通す孔(ポア)を形作るα1サブユニットを作るためのタンパク合成情報を持っています。
Nav1.1は、興奮性グルタミン酸神経系に比べて抑制性GABA神経系で優勢に発現しています。
そのため、SCN1A遺伝子変異がある患者さんでは、Nav1.1の機能低下(Na+の通過障害)が生じて、抑制性シグナルの働きが低下し、てんかん発作が起こると考えられています。
Dravet症候群患者に対して、Na+チャネルを強く阻害する抗てんかん薬を投与すると、発作悪化を招くのは、SCN1A遺伝子の変異によるNav1.1の機能低下が増強されるためと考えられています。

Dravet症候群の遺伝子検査
Dravet症候群は遺伝子異常の同定が確定診断につながることもあり、臨床症状による診断よりも早い時期から治療方針の設定や遺伝カウンセリングに活かせると考えられています。
ただし、遺伝子異常が認められた人がすべてDravet症候群の患者であるとは限りません。
なお、Dravet症候群の遺伝子検査は保険収載されており、臨床症状や他の検査等では診断がつかない場合に、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において検査が行われる場合に算定できます。
SCN1A遺伝子に変異等が認められない場合は、さらにSCN1B、SCN2A、GABRG2遺伝子も検索する場合があります。
- 1)
- 難病情報センター Dravet症候群:指定難病140 診断・治療指針(医療従事者向け)
- 2)
- 日本小児神経学会監修 小児急性脳症診療ガイドライン改訂ワーキンググループ編集 小児急性脳症診療ガイドライン2023 第8章 診断と治療社
- 3)
- 石井敦士, 医学のあゆみ. 2015; 253(7): 561-567.
- 4)
- Oakley JC, et al. Epilepsia. 2011; 52 Suppl 2(Suppl 2): 59-61.
- 5)
- Hirose S, et al. Epilepsia. 2013; 54(5): 946-952.
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