肺動脈性肺高血圧症

国内第Ⅱ相試験―オープンラベル試験― 7), 8)

国内第Ⅱ相試験には承認外の用法及び用量が含まれていますが、承認時評価資料であることからデータを記載しています。

6. 用法及び用量 通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。 なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。

試験方法

目 的 肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者におけるウプトラビ®の有効性、安全性及び忍容性を評価する。
対 象 肺動脈性肺高血圧症患者37例(All-treated set:全治験薬投与例数)
Per-protocol set 33例 (有効性評価期間終了時のPVR欠測4例を除外)

選択基準

1肺高血圧症のダナポイント分類Group1のうち、以下に該当するWHO機能分類クラスⅠ~Ⅳの患者
  • 特発性肺動脈性肺高血圧症
  • 遺伝性肺動脈性肺高血圧症
  • 薬物又は毒物誘発性肺動脈性肺高血圧症
  • 以下の疾患に関連する肺動脈性肺高血圧症
    1. ①結合組織病
    2. ②先天性心疾患(すべてのベースライン検査実施時にシャント修復術から1年以上経過している)
    3. ③ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症
2以下の基準に従って肺動脈性肺高血圧症の診断が右心カテーテル検査により確定された患者
  • 安静時平均肺動脈圧(mPAP)≧25mmHg
  • 肺動脈楔入圧(PAWP)又は左室拡張末期圧(LVEDP)<15mmHg
3右心カテーテル検査による安静時肺血管抵抗(PVR)のベースライン値が400dynes・s・cm-5を超えている患者
血行動態測定時期は、以下のすべての条件を満たす
  • 治験薬投与開始前30日以内
  • 以下の併用制限薬又は併用禁止薬を中止した上で、治験薬を服用する場合は以下に示す適切なwashout期間が経過した後
    1. エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬:4週間以上
    2. プロスタサイクリン:4週間以上
    3. ベラプロストナトリウム:1週間以上
  • ERA及び/又はPDE5阻害薬を併用している患者では、右心カテーテルによる血行動態測定に際して以下に示す時間での服用を許容した
    1. シルデナフィルは右心カテーテル検査の少なくとも4~6時間前に投与した(すなわち、短期的影響を除いた)。
    2. ボセンタン、アンブリセンタン、タダラフィル又はカルシウム拮抗薬は検査日に通常の時間に投与した。
418歳以上の患者

投与方法

ウプトラビ®1回0.2~1.6mgを1日2回食後に経口投与した。1回0.2mgから開始し、1回0.8mgまでは3日以上の間隔で、1回1.0~1.6mgまでは1週間以上の間隔で1回あたり0.2mgずつ漸増し、投与12週目までに患者ごとの最大耐用量を維持用量として決定した。増量中、忍容性に問題があると判断した場合は、減量を行うことができることとした。その後、投与16週目の有効性評価までの間は4週間以上維持用量を投与した。投与16週目以降は長期投与期間とし、維持用量にて投与を継続するが、1回1.6mgを上限として増量又は減量を可能とした。

併用療法 ERA、PDE5阻害薬及びカルシウム拮抗薬の併用は可能であるが、その場合いずれも治験薬投与開始の90日以上前から治験薬投与期間を通して一定量を投与することとした。

試験デザイン

評価項目

1)主要評価項目

  • 投与16週目のPVRのベースラインからの変化

2)副次評価項目

  • 投与16週目のPVR以外の肺血行動態のベースラインからの変化
  • 投与16週目の6分間歩行距離及びBorg呼吸困難指数におけるベースラインからの変化
  • 投与16週目のWHO機能分類クラスのベースラインからの変化
  • 投与16週目のNT-proBNP濃度のベースラインからの変化
6. 用法及び用量

通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。
なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。

解析計画

主要評価項目である、投与16週目のPVRのベースラインからの変化量に関して評価した。

1)主要評価項目

主要解析はPer-protocol setを対象とし、投与16週目のPVRのベースラインからの変化量について、Wilcoxon符号付順位検定を行った。第1種過誤レベルを両側0.05とした。投与後のデータが欠測している例や補完された例はこの解析から除外した。統計的多重性は考慮しなかった。

2)副次評価項目

Per-protocol set 及び All-treated setaの両解析対象集団について評価した。治験薬投与前後の比較は第1種過誤を両側0.05とした。多重性の調整を行わなかった。

  • a :All-treated set を用いた解析における有効性データの欠測値は以下のように補完した
    • ベースラインの欠測値は治験薬投与前の平均値で補完
    • 肺動脈性肺高血圧症の悪化(もしくは肺動脈性肺高血圧症悪化による死亡)に関する欠測データは最も悪い値で補完
    • 他の理由による評価データの欠測値:各時点における有効性の解析では補完を行わず、最終時点のみ直近の先行測定値によって補完

利益相反

本試験は日本新薬株式会社及びアクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン株式会社により行われた。

患者背景

人口統計学的特性及びベースライン時における疾患特性(All-treated set)

ウプトラビ® 群(N=37)
性別 男性 11 (29.7%)
女性 26 (70.3%)
年齢(歳) 全体 44.5±13.3
<65歳 33 (89.2%)
≧65歳 4 (10.8%)
体重(kg) 57.5±15.2
BMI(kg/m2 22.5±4.3
PAH疾患分類 特発性PAH 25 (67.6%)
遺伝性PAH 5 (13.5%)
結合組織病に伴うPAH 6 (16.2%)
先天性心疾患に伴うPAH 1 (2.7%)
WHO機能分類クラス 2 (5.4%)
21 (56.8%)
14 (37.8%)
0
6分間歩行距離(m) 415.7±122.4
PAH治療併用薬 併用なし 6 (16.2%)
併用あり 31 (83.8%)
 ERAのみ 2 (5.4%)
 PDE5阻害薬のみ 3 (8.1%)
 ERA+PDE5阻害薬 26 (70.3%)
肺血行動態 PVR(dynes・s・cm-5 725.3±292.5
mPAP(mmHg) 42.3±9.5
PAWP(mmHg) 8.2±3.2
CI(L/min/m2 2.56±0.56

例数(%)もしくは平均値±標準偏差

主要評価項目

投与16週目におけるPVRの変化

投与16週目のベースラインからのPVRの変化量の中央値は-120.9(95%信頼区間:-184.5~-59.5)dynes・s・cm-5で、ベースラインと比較して有意に低下した(p<0.0001、Wilcoxon符号付順位検定)。なお、変化率(投与16週目/ベースライン×100)の幾何平均値は79.7%(95%信頼区間:74.0%~86.0%)であった。

投与16週目におけるPVRのベースラインからの変化(Per-protocol set、N=33)

投与16週目におけるPVRのベースラインからの変化(Per-protocol set、N=33)

PVR
(dynes・s・cm-5
平均値±標準偏差
中央値
ベースラインからの変化量
平均値±標準偏差
中央値
(中央値の95%信頼区間)
幾何平均値
(95%信頼区間)
ベースライン 683.2±237.3
671.8
-122.9±115.2
-120.9
(-184.5~-59.5)
p<0.0001a
79.7
(74.0~86.0)
投与16週目 560.3±238.7
491.4

a : Wilcoxon符号付順位検定

副次評価項目

PVR以外の肺血行動態、6分間歩行距離、Borg呼吸困難指数、
NT-proBNP濃度及びWHO機能分類クラスの変化

ベースライン時及びウプトラビ®投与16週目のPVR以外の肺血行動態、6分間歩行距離、Borg呼吸困難指数、NT-proBNP濃度の変化を以下に示す。
WHO機能分類クラスについては、投与16週目における改善は4例(12.1%)で、1例がクラスⅡからⅠへ、3例がクラスⅢからⅡへ改善した。WHO機能分類クラスの悪化例は認められなかった。

投与16週目における副次評価項目に関する各パラメータのベースラインからの変化
(Per-protocol set、N=33)

評価項目 ベースライン時a 投与16週目a 変化量b
(95%信頼区間)
Wilcoxon
符号付順位検定
mRAP(mmHg) 4.5±2.5 4.7±2.7 0.0
(-1.0~2.0)
p=0.7010
mPAP(mmHg) 41.8±9.2 38.8±8.9 2.0
(-6.0~0.0)
p=0.0091
CO(L/min) 4.14±0.87 4.64±1.29 0.40
(0.00~0.73)
p=0.0034
CI(L/min/m2) 2.63±0.50 2.96±0.74 0.22
(0.02~0.51)
p=0.0025
PVRI(dynes・s・m2・cm-5) 1076.7±390.5 881.9±405.2 -185.2
(-304.7~-118.4)
p<0.0001
SvO2(%)〔 n=32 70.46±6.96 70.00±8.35 0.65
(-1.20~2.10)
p=0.9771
6分間歩行距離(m)〔n=30 445.0±102.2 459.1±112.8 19.5
(0.0~37.0)
p=0.0324
Borg呼吸困難指数〔n=30 3.0b 2.0b 0.0
NT-proBNP濃度(pg/mL) 111.1c
(71.4~172.8)
105.7c
(66.4~168.4)
-13.0
(-29.0~13.0)
p=0.5634

a:平均値±標準偏差 b: 中央値 c: 幾何平均値(95%信頼区間) d: Per-protocol set33例のうち、欠測症例を除いた症例数

投与16週目におけるWHO機能分類クラスのベースラインからの変化
(Per-protocol set、N=33)

投与16週目
n 3 22 8 0
ベースライン 2 2(6.1%)
20 1(3.0%) 19(57.6%)
11 3(9.1%) 8(24.2%)
0

安全性

副作用

ウプトラビ®を投与期間中央値84.6週間(範囲:0.1~136.0週間)投与したとき、副作用は37例中37例(100%)に認められた。

発現率10%以上の副作用

事象名 例数 発現率
頭痛 27 73.0%
下痢、顎痛 各17 45.9%
悪心 14 37.8%
潮紅 12 32.4%
筋肉痛 7 18.9%
低血圧a、関節痛、倦怠感、ほてり 各6 16.2%
四肢痛 5 13.5%
背部痛、嘔吐 各4 10.8%

発現率10%以上の事象を抜粋

  • a:血圧低下を含む

重篤な副作用(死亡を除く)

重篤な副作用(死亡を除く)は、嘔吐、浮動性めまい、低酸素症、血圧低下及び胸部不快感各1例(2.7%)であった。

投与中止に至った副作用(死亡を除く)

投与中止に至った副作用(死亡を除く)は、死亡に至った右室不全1例(2.7%)と、重篤な副作用とされた 血圧低下1例(2.7%)であった。

死亡

副作用としての死亡は1例(2.7%)で認められ、死因は右室不全であった。

死亡に至った重篤な副作用の発現状況

年齢、性別 投与量 b 副作用 発現日 c 程度 重篤/非重篤 治験薬の処置
59歳女性 1.0mg/回 右室不全 203日 重度 重篤 中止
  • b:副作用発現時のウプトラビ®投与量
  • c:ウプトラビ®の投与開始から副作用発現までの日数
  •  
  • MedDRA ver. 17.0
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