肺動脈性肺高血圧症
海外第Ⅱ相試験
(Acute hemodynamic study・プラセボ対照二重盲検比較試験,海外データ)5), 6)
- 5) Simonneau G. et al. : Eur Respir J. 40:874-880, 2012(利益相反:Actelion Pharmaceuticals Ltd. の支援のもとに行われた。)
- 6) 日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料): 肺動脈性肺高血圧症患者を対象とした海外第Ⅱ相試験
海外第Ⅱ相試験には承認外の用法及び用量が含まれていますが、承認時評価資料であることからデータを記載しています。
6. 用法及び用量 通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。 なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。
試験方法
目 的 |
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者におけるウプトラビ®の単回経口投与による肺血行動態パラメータに対する作用、安全性及び忍容性を評価する。 プラセボ対照二重盲検比較試験Acute hemodynamic studyの翌日からウプトラビ®又はプラセボを二重盲検下で17週間反復経口投与し、肺動脈性肺高血圧症患者における有効性及び安全性を評価する。 |
対 象 |
肺動脈性肺高血圧症患者43例(All-treated HD set、All-treated DB set)a
|
選択基準
- 1 抗凝固薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、強心薬、酸素吸入、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)及び/又はホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬による治療cを受けているにもかかわらず症候性の肺動脈性肺高血圧症を有する18歳以上の患者
-
- c : ERA及びPDE5阻害薬はスクリーニング前12週間以上にわたり固定用量で使用した。
- 2特発性肺動脈性肺高血圧症、遺伝性肺動脈性肺高血圧症、もしくは結合組織病、修復済みの先天性心疾患(シャント修復術から5年以上経過)、又は食欲抑制薬の使用に伴う肺動脈性肺高血圧症の患者
- 3右心カテーテル検査により、肺動脈性肺高血圧症の診断基準(下記3項目)を満たすことが確認されている者
-
- 安静時平均肺動脈圧(mPAP)>25mmHg
- 安静時肺血管抵抗(PVR)>240 dynes・s・cm-5
- 肺動脈楔入圧(PAWP)又は左室拡張末期圧(LVEDP)<15mmHg
- 4PVR>400 dynes・s・cm-5
- 5その他の肺動脈性肺高血圧症治療を受けているにもかかわらず、スクリーニング及びベースラインの6分間歩行距離が150~500mであり、2回の試験結果の差が15%以内である者
投与方法
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)
最初の12例にウプトラビ®0.2mgを単回経口投与し、これらの12例の安全性評価に基づき、残りの31例にウプトラビ®0.4mgを単回経口投与した。
プラセボ対照二重盲検比較試験
Acute hemodynamic studyの翌日から17週間を二重盲検期とし、ウプトラビ®33例、プラセボ10例に1日2回食後経口投与した。ウプトラビ®は1回0.2mgから開始し、35日目までに最終至適用量となるよう(最高用量1回0.8mg)、0.2mgずつ漸増投与(忍容性が良好であれば、3日目に1回0.4mg、7日目に1回0.6mg、21日目に1回0.8mgに増量)した。
併用療法 | 抗凝固薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、強心薬、酸素吸入の使用は許可した。ERA及び/又はPDE5阻害薬は基礎治療として必須とし、その用量は、スクリーニング時から二重盲検比較試験の終了時まで固定とした。 |
6. 用法及び用量 通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。 なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。
試験デザイン
評価項目
1)主要評価項目
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)
ベースラインからウプトラビ®単回投与4時間後までのPVRの変化
プラセボ対照二重盲検比較試験
PVRのベースラインから投与17週目までの変化
2)副次評価項目
- 6分間歩行距離のベースラインから投与17週目までの変化
- 肺動脈性肺高血圧症が悪化aした患者の割合
- PVR以外の肺血行動態パラメータbのベースラインから投与17週目までの変化
- a:死亡(原因不問)、肺移植、肺動脈性肺高血圧症の悪化による入院、肺動脈性肺高血圧症の症状の悪化(6分間歩行距離が10%以上悪化し肺高血圧症治療薬の追加が必要になった場合)
- b:安静時平均肺動脈圧(mPAP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、右房圧(RAP)、心係数(CI)、体血管抵抗(SVR)
解析計画
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)及びプラセボ対照二重盲検比較試験の両試験の主要評価項目について、絶対値及びベースラインからの変化量を、Per-protocolsetの患者を対象に、幾何平均値及び両側95%信頼限界(CL)を用いて、投与群別に要約した。群間の比較にはWilcoxon順位和検定(主検定)及びt検定(副次検定)を用いた。
副次評価項目は、All-treated DB setを対象に記述的に解析した。群間の比較にはWilcoxon順位和検を用いた。
利益相反
本試験は日本新薬株式会社及びActelion Pharmaceuticals Ltd.により行われた。
患者背景
人口統計学的特性及びベースライン時における疾患特性(All-treated DB set)
ウプトラビ® 群 (N=33) |
プラセボ群 (N=10) |
合計 (N=43) |
||
---|---|---|---|---|
性別 | 男性 | 6 (18.2%) | 2 (20.0%) | 8 (18.6%) |
女性 | 27 (81.8%) | 8 (80.0%) | 35 (81.4%) | |
年齢(歳) | 54.8±16.8 | 53.8±16.3 | 54.6±16.5 | |
体重(kg) | 68.7±12.4 | 70.6±13.9 | 69.1±12.6 | |
BMI(kg/m2) | 26.0±4.0 | 27.1±5.6 | 26.2±4.4 | |
PAH診断aからの期間(年) | 5.5±6.1 | 4.0±3.1 | 5.2±5.6 | |
PAH疾患分類 | 特発性PAH | 24 (72.7%) | 7 (70.0%) | 31 (72.1%) |
遺伝性PAH | 1 (3.0%) | 1 (10.0%) | 2 (4.7%) | |
薬物・毒物誘発性PAH | 2 (6.1%) | 0 | 2 (4.7%) | |
結合組織病に伴うPAH | 4 (12.1%) | 2 (20.0%) | 6 (14.0%) | |
先天性心疾患に伴うPAH | 2 (6.1%) | 0 | 2 (4.7%) | |
NYHA/WHO機能 分類クラス |
Ⅰ | 0 | 0 | 0 |
Ⅱ | 15 (45.5%) | 2 (20.0%) | 17 (39.5%) | |
Ⅲ | 18 (54.5%) | 8 (80.0%) | 26 (60.5%) | |
Ⅳ | 0 | 0 | 0 | |
6分間歩行距離(m) | 394.7±72.0 | 350.3±123.5 | - | |
PAH治療併用薬 | 併用なし | 0 | 0 | 0 |
併用あり | 33 (100%) | 10 (100%) | 43 (100%) | |
ERAのみ | 12 (36.4%) | 4 (40.0%) | 16 (37.2%) | |
PDE5阻害薬のみ | 9 (27.3%) | 3 (30.0%) | 12 (27.9%) | |
ERA+PDE5阻害薬 | 12 (36.4%) | 3 (30.0%) | 15 (34.9%) | |
肺血行動態 | PVR(dynes・s・cm-5) | 948.6±428.0 | 867.2±379.3 | - |
mPAP(mmHg) | 54.5±15.3 | 54.6±13.8 | - | |
PAWP(mmHg) | 8.5±3.1 | 10.3±2.5 | - | |
CI(L/min/m2) | 2.42±0.60 | 2.49±0.53 | - |
例数(%)もしくは平均値±標準偏差
「6分間歩行距離」、「PVR」、「mPAP」、「CI」のウプトラビ®群の評価例数は32例、
「PAWP」のウプトラビ®群の評価例数は31例
a :肺血行動態より確定
6. 用法及び用量
通常、成人にはセレキシパグとして1回0.2mgを1日2回食後経口投与から開始する。忍容性を確認しながら、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量して維持用量を決定する。
なお、最高用量は1回1.6mgとし、いずれの用量においても、1日2回食後に経口投与する。
主要評価項目
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)
投与4時間後におけるPVRの変化
ウプトラビ®投与4時間後のPVRのベースラインに対する変化率は106.5%であった。
投与4時間後におけるPVRのベースラインからの変化 (Per-protocol HD set)
PVR (dynes・s・cm-5) |
ウプトラビ®群全体 (N=33) |
ウプトラビ®0.2mg群 (N=11) |
ウプトラビ®0.4mg群 (N=22) |
---|---|---|---|
ベースラインa | 891.8±352.5 | 883.6±369.4 | 895.8±352.5 |
投与4時間後a | 956.2±392.9 | 1025.0±478.4 | 921.7±350.0 |
変化量a | 64.4±176.5 | 141.4±184.2 | 25.9±163.2 |
変化率b | 106.5(100.9~112.4) | 114.7(104.1~126.5) | 102.6(96.2~109.4) |
a :平均値±標準偏差 b : 幾何平均値(95%信頼区間)
プラセボ対照二重盲検比較試験
投与17週目におけるPVRの変化
投与17週目のPVRの幾何平均値は、ウプトラビ®群29例及びプラセボ群6例でそれぞれベースライン値の
80.7%(95%信頼区間:72.8%~89.6%)及び115.9%(95%信頼区間:106.5%~126.1%)であった。ウプトラビ®群のプラセボ群に対する変化率の比は、-30.3%(95%信頼区間:-44.7%~-12.2%)であり、統計学的に有意であった(p=0.0045、Wilcoxon順位和検定)。
投与17週目におけるPVRのベースラインからの変化 (Per-protocol DB set)
PVR (dynes・s・cm-5) |
プラセボ群 (N=6) |
ウプトラビ®群 (N=29) |
---|---|---|
ベースラインc | 826.8±195.8 | 951.9±434.5 |
17週目c | 964.0±247.9 | 783.8±393.2 |
変化量c | 137.2±84.9 | -168.1±241.6 |
変化率d(95%信頼区間) | 115.9(106.5~126.1) | 80.7(72.8~89.6) |
治療効果e (95%信頼区間) |
-30.3%(-44.7%~ -12.2%)p=0.0045f |
c :平均値±標準偏差 d : 幾何平均値 e :変化率の比=(幾何平均値の比-1)×100 f: Wilcoxon順位和検定
副次評価項目
6分間歩行距離の変化
6分間歩行距離はベースラインから投与17週目における6分間歩行距離のベースラインからの変化量(中央値)は、ウプトラビ®群で25.0m、プラセボ群で6.0mであった。この歩行距離延長効果の中央値は18.0(95%信頼区間:-12.4~61.4)mであった。
投与17週目における6分間歩行距離のベースラインからの変化 (All-treated DB set)
6分間歩行距離 (m) |
プラセボ群 (N=10) |
ウプトラビ®群 (N=32)a |
---|---|---|
ベースラインb | 350.3±123.5 | 394.7±72.0 |
17週目b | 350.7±139.6 | 419.3±106.3 |
変化量c | 6.0(-33.0~23.0) | 25.0(-2.0~42.0) |
治療効果c | 18.0 (-12.4~61.4) p=0.2218d |
a:欠測1例除外 b :平均値±標準偏差 c : 中央値(95%信頼区間) d : Wilcoxon順位和検定
肺動脈性肺高血圧症が悪化した患者の割合
肺動脈性肺高血圧症の悪化に該当する事象を発現した患者の割合は、ウプトラビ®群3.0%(1/33例)、プラセボ群20.0%(2/10例)であった。これらの患者はすべて、肺動脈性肺高血圧症の悪化により入院し、治験を中止した。
PVR以外の肺血行動態パラメータの変化
ウプトラビ®群ではプラセボ群と比較して心係数(CI)を上昇させ[治療効果の中央値:0.41(95%信頼区間:0.10~0.71)L/min/m2(p=0.0137、Wilcoxon順位和検定)]、体血管抵抗(SVR)を低下させた[治療効果の中央値:-427(95%信頼区間:-668.3~-134.5)dynes・s・cm-5(p=0.0071、Wilcoxon順位和検定)]。
投与17週目におけるPVR以外の肺血行動態パラメータのベースラインからの変化
(All-treated DB set)
ベースラインb | 17週後b | 変化量b | 治療効果c | Wilcoxon 順位和検定 |
||
---|---|---|---|---|---|---|
mPAP (mmHg) |
プラセボ N=10 |
54.6±13.8 | 60.3±20.2 | 5.7±13.3 | ||
ウプトラビ® N=32a |
54.5±15.3 | 52.8±19.1 | -1.7±11.0 | -5.3 (-11.3~1.1) |
p=0.1055 | |
PAWP (mmHg) |
プラセボ N=10 |
10.3±2.5 | 8.7±1.7 | -1.6±2.7 | ||
ウプトラビ® N=31a |
8.5±3.1 | 9.1±2.7 | 0.6±3.4 | 2.3 (-0.2~4.7) |
p=0.0654 | |
RAP (mmHg) |
プラセボ N=10 |
11.2±5.7 | 8.3±4.9 | -2.9±2.8 | ||
ウプトラビ® N=30a |
6.9±3.6 | 7.2±3.6 | 0.3±3.5 | 3.1 (0.7~5.4) |
p=0.0151 | |
CI (L/min/m2) |
プラセボ N=10 |
2.49±0.53 | 2.26±0.40 | -0.23±0.18 | ||
ウプトラビ® N=32a |
2.42±0.60 | 2.67±0.62 | 0.25±0.54 | 0.41 (0.10~0.71) |
p=0.0137 | |
SVR (dynes・s・cm-5) |
プラセボ N=10 |
1399.2±475.1 | 1687.1±429.2 | 287.9±227.8 | ||
ウプトラビ® N=30a |
1572.8±544.7 | 1452.8±433.6 | -119.9±498.8 | -427.0 (-668.3~-134.5) |
p=0.0071 |
- mPAP:平均肺動脈圧、PAWP:肺動脈楔入圧、RAP:右房圧、 CI:心係数、 SVR:体血管抵抗
- a:All-treated DB setのウプトラビ®群33例のうち、欠測症例を除いた症例数
- b:平均値±標準偏差 c:中央値(95%信頼区間)
- 補完方法:PAHの悪化又は死亡の場合、最悪値補完 それ以外の場合、LOCF
安全性
副作用
Acute hemodynamic study(オープンラベル試験)
副作用は、ウプトラビ®0.2mg群66.7%(8/12例)、ウプトラビ®0.4mg群51.6%(16/31例)に認められた。いずれかの群で20%以上に認められた副作用は、頭痛でウプトラビ®0.2mg群58.3%(7/12例)、ウプトラビ®0.4mg群38.7%(12/31例)、四肢痛でウプトラビ®0.2mg群25.0%(3/12例)、ウプトラビ®0.4mg群0%(0/31例)であった。
発現率20%以上の副作用
事象名 | ウプトラビ®0.2mg群(N=12) | ウプトラビ®0.4mg群(N=31) | ||
---|---|---|---|---|
例数 | 発現率 | 例数 | 発現率 | |
頭痛 | 7 | 58.3% | 12 | 38.7% |
四肢痛 | 3 | 25.0% | 0 | 0% |
投与中止に至った副作用
投与中止に至った副作用は、ウプトラビ®0.4mg群の頭痛1例(2.3%)であった。
重篤な副作用
重篤な副作用は認められなかった。
死亡
死亡に至った副作用は認められなかった。
MedDRA ver. 12.0
プラセボ対照二重盲検比較試験
ウプトラビ®群の副作用の発現率は、90.9%(30/33例)であった。
プラセボ群の副作用の発現率は、30.0%(3/10例)であった。
発現率10%以上の副作用
事象名 | ウプトラビ®群 | プラセボ群 | ||
---|---|---|---|---|
例数 | 発現率 | 例数 | 発現率 | |
頭痛 | 22 | 66.7% | 2 | 20.0% |
顎痛 | 12 | 36.4% | 0 | 0% |
四肢痛 | 10 | 30.3% | 0 | 0% |
悪心 | 8 | 24.2% | 0 | 0% |
下痢 | 6 | 18.2% | 0 | 0% |
潮紅 | 6 | 18.2% | 0 | 0% |
浮動性めまい | 5 | 15.2% | 0 | 0% |
筋肉痛 | 4 | 12.1% | 0 | 0% |
ウプトラビ®群で発現率10%以上の事象を抜粋
重篤な副作用
重篤な副作用は、頭痛がウプトラビ®群2例(6.1%)、プラセボ群で0例(0.0%)、悪心、嘔吐、筋肉痛、呼吸困難及び胸痛がウプトラビ®群各1例(3.0%)、プラセボ群各0例(0.0%)であった。
投与中止に至った副作用
投与中止に至った副作用は、ウプトラビ®群で無力症・筋肉痛が1例(3.0%)に認められた。
死亡
死亡に至った副作用は認められなかった。
MedDRA ver. 12.0