薬効薬理

作用機序12)

12)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):
非臨床試験の概要 緒言

ビルトラルセンは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の原因遺伝子であるジストロフィンのエクソン53を標的とするアンチセンス核酸である。

例えば、エクソン45から52が欠失したDMD患者の場合、ジストロフィンmRNA前駆体がスプライシングを経ると、エクソン44と53が直接つながるため、エクソン53以降でアミノ酸への読み取り枠がずれる(アウト・オブ・フレーム)。すると、エクソン53の途中に終止コドンが出現してジストロフィンが発現しない。

ここにビルトラルセンを投与すると、ビルトラルセンがジストロフィンmRNA前駆体のエクソン53の一部に相補的に結合して、スプライシングの過程でエクソン53がスキッピングする。すると、エクソン54以降のアミノ酸読み取り枠が回復して(イン・フレーム)、正常よりも短いが、両端の構造を保持したジストロフィンが発現する。これにより、DMDに対する作用を示すと考えられている。

DMD患者におけるエクソンスキッピング(エクソン45-52を欠失したDMD患者の場合)

DMD患者におけるエクソンスキッピング(エクソン45-52を欠失したDMD患者の場合)
DMD患者におけるエクソンスキッピング(エクソン45-52を欠失したDMD患者の場合)

*各エクソンの形は、エクソンを構成する塩基数によって変えており、3の倍数か否かを示すものです。
詳細はビルテプソ®適正使用ガイドを参照ください。

非臨床試験

  • 13)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):エクソン45-52欠損DMD患者由来線維芽細胞を用いた検討 (COI:本研究は日本新薬株式会社により行われた。)
  • 14)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):エクソン48-52欠損DMD患者由来線維芽細胞を用いた検討 (COI:本研究は日本新薬株式会社により行われた。)
  • 15)日本新薬株式会社 社内資料(承認時評価資料):サルを用いた検討 (COI:本研究は日本新薬株式会社により行われた。)

(1)DMD患者由来線維芽細胞における検討(エクソン45-52欠失・エクソン48-52欠失)

  1. 1)エクソン53スキッピング活性に対する影響(in vitro13、14)

    エクソン45–52欠失DMD患者由来の筋管細胞にビルトラルセンを2日間適用したところ、適用終了直後(適用開始から2日後)及び適用終了5日後(適用開始から7日後)においてエクソン53スキッピング活性が認められた。EC50値はそれぞれ0.63 μmol/L(95%CI:0.53~0.74 μmol/L)及び0.90 μmol/L(95%CI:0.61~1.32 μmol/L)と推定された。

    エクソン45-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるエクソン53スキッピング効率

    同様に、エクソン48-52欠失DMD患者由来の筋管細胞にビルトラルセンを適用したところ、2日間の適用終了5日後(適用開始から7日後)においてエクソン53スキッピング活性が認められ、そのEC50値は2.30 μmol/L(95%CI:1.84~2.88 μmol/L)と推定された。

    エクソン48-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるエクソン53スキッピング効率

    方法
    エクソン45–52及び48-52欠失DMD患者由来線維芽細胞から分化させた筋管細胞に、ビルトラルセン(0、0.03、0.1 、0.3、1、3及び10 μmol/L、終濃度)を2日間適用した※。適用終了直後(適用開始から2日後)、もしくは被験物質を含まない培養液に交換して培養を継続した適用終了5日後(適用開始から7日後)にtotal RNAを抽出し、RT-PCR法によりビルトラルセンのエクソン53スキッピング活性を評価した。スキッピング効率(%)は以下のように算出した。
    スキッピング効率(%)=A÷(A+B)×100
    A:エクソン53を含まないPCR産物の定量値(モル濃度)
    B:エクソン53を含むPCR産物の定量値(モル濃度)
    解析には、2パラメータロジスティックモデルを使った非線形回帰分析を行い、EC50値及び95%信頼区間を推定した。
    (※エクソン45-52欠失DMD患者由来の筋管細胞の適用終了直後の試験では、0.03の濃度を設定しなかった。また、ビルトラルセンの適用に遺伝子導入試薬を使用した。)
  2. 2)ジストロフィンの発現に対する影響(in vitro13、14)

    エクソン45–52欠失DMD患者由来の筋管細胞にビルトラルセンを適用したところ、1 µmol/L以上の濃度で正常ジストロフィン(427 kDa)より質量の小さいバンドが検出された。これは、エクソン45–53に相当する部分が欠損した372 kDaのジストロフィンに由来すると考えられた。

    エクソン45-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現

    エクソン45-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現
    エクソン45-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現

    エクソン48–52欠失DMD患者由来の筋管細胞にビルトラルセンを適用したところ、0.1 µmol/L以上の濃度で正常ジストロフィン(427 kDa)より質量の小さいバンドが検出された。これは、エクソン48–53に相当する部分が欠損した390 kDaのジストロフィンに由来すると考えられた。

    エクソン48-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現

    エクソン48-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現
    エクソン48-52欠失DMD患者由来の筋管細胞におけるジストロフィンの発現
    方法
    エクソン45–52及び48-52欠失DMD患者由来線維芽細胞から分化させた筋管細胞に、遺伝子導入試薬を使わずにビルトラルセン(0、0. 03、0. 1、0. 3、1、3及び10 μmol/L、終濃度)を2日間適用した。その後、被験物質を含まない培養液に交換して培養を継続した。適用開始7日後(適用終了5日後)に回収した細胞を用い、イムノブロットによりジストロフィンの発現を検出した。正常ジストロフィン(陽性対照、ヒト正常線維芽細胞から分化させた筋管細胞より回収)に由来するバンドは427 kDa、エクソン45–53欠損ジストロフィンに由来するバンドは372 kDa、エクソン48–53欠損ジストロフィンに由来するバンドは390 kDaの大きさで検出される。これらのバンドの有無を確認することで、ビルトラルセンのジストロフィンの発現に対する影響を検討した。

(2)カニクイザルにおける検討15)

  1. 1)エクソン53スキッピング活性に対する影響(サル)

    ビルトラルセンをカニクイザルに週1回、39週間静脈内投与したところ、投与期間終了翌日及び8週間の回復期間後、一部の用量において、骨格筋及び心筋でエクソン53スキッピング活性が認められた。

    カニクイザルの骨格筋におけるエクソン53スキッピング効率

    カニクイザルの心筋におけるエクソン53スキッピング効率

    方法
    カニクイザルにビルトラルセン(用量:0、10、60、360 mg/kg)を週1回、39週間静脈内投与し、投与期間終了翌日に採取した骨格筋及び心筋からtotal RNAを抽出した(各群n=5)。0、60、360 mg/kgの用量群(各群n=3)においては、8週間の回復期間を設けた後の骨格筋及び心筋からもtotal RNAを抽出した。エクソン53スキッピング効率は、RT-PCR法を用いて以下のように算出した。
    スキッピング効率(%)=A÷(A+B)×100
    A:エクソン53を含まないPCR産物の定量値(モル濃度)
    B:エクソン53を含むPCR産物の定量値(モル濃度)

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