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第2回肺高血圧症患者さんが薬物療法について
抱える不安とその対応

  • ご監修

    • 学校法人渡辺学園 東京家政大学
      健康科学部 看護学科

      講師 瀧田 結香 先生

    今回は、瀧田 結香 先生(学校法人渡辺学園 東京家政大学 
    健康科学部 看護学科)に、肺高血圧症(PH)患者さんが
    薬物療法に抱える不安とその対応についてご解説いただき
    ます。

    略歴:
    東京医科歯科大学卒業後、慶應義塾大学病院循環器内科病棟に勤務。
    杏林大学保健学部、慶應義塾大学看護医療学部を経て、現職。

PH患者さんが薬物療法について
抱える不安や課題

 PH治療では、内服の肺血管拡張薬を開始した患者さんが、副作用がつらくて治療継続や薬剤の増量を拒否する場合があります。肺血管拡張薬の種類によって出現する副作用は異なりますが、特に、頭痛や吐き気をつらく感じるようです。副作用を来した患者さんは、「この頭痛や吐き気さえなければ、薬は何のストレスもなく続けられるのに・・」とおっしゃることが多いので、肺血管拡張薬を継続するためには、主治医の先生から頭痛や吐き気などの副作用対策を行っていただくことも大切だと考えています。

  • 内服治療中のPH患者さんは副作用がつらくて治療継続や薬剤の増量を拒否する場合がある
  • 特に頭痛や吐き気をつらく感じる

頭痛や吐き気に対するサポート

 頭痛は、鎮痛剤の投与により緩和することが比較的多いため、鎮痛剤を処方されることが多いです。しかし、患者さんの中には現在の治療薬以外の薬をさらに服用することを躊躇してしまう方もいらっしゃいますので、頭痛がある場合には遠慮せずに鎮痛剤を服用して構わないことや、副作用の頭痛を薬でなるべく抑えながら肺血管拡張薬を継続していく大切さを医師もしくは薬剤師からご説明いただくことで、患者さんが自身の副作用をコントロールしながら治療を継続できるのではないかと思います。

 吐き気については、制吐剤を処方されることが多いです。しかし、吐き気は制吐剤だけでは緩和しない場合もあります。その場合は、医師と相談のうえ、メディカルスタッフから少量ずつこまめに水分を摂るよう伝えたり、喉越しのよい食事を摂るようにアドバイスしたり、つらさを傾聴するなどのサポートをしています。

 また、これらの副作用の緩和には、マインドフルネス認知療法(MBCT)が有用な可能性があると考えています。MBCTのひとつに、ボディスキャン瞑想と呼ばれる、体の各部位に意識を向ける瞑想法があるのですが、実際にボディスキャン瞑想を患者さんに行ってもらったところ、「痛みや吐き気は変わらずあるけれども、そのつらさが減って楽になった。今では副作用があるときにやるようにしている」という声が複数聞かれました。今後は、こういったセルフマネジメントを取り入れてもらうアプローチも有用なのではないかと考えられます。

  • 主な副作用に対するサポート方法
頭痛 鎮痛剤を処方、治療継続の必要性を説明
吐き気 制吐剤を処方、少量ずつこまめに水分を摂るよう伝える、喉越しのよい食事、つらさを傾聴するなどのサポート
全体的な副作用対策 マインドフルネス認知療法などによるセルフマネジメント

ウプトラビ®の増量を躊躇される患者さんへの対応

 ウプトラビ®は、十分な有効性を発揮するために、患者さんにとっての最大耐用量まで増量することが必要な薬剤です。一方、下痢、悪心・嘔吐などの副作用が発現するため、これらの副作用がつらく、増量を躊躇される方もいらっしゃいます。中には、「ウプトラビ®服用中はずっと副作用が続くのではないか」と不安に思われている方もいらっしゃいます。
こういった増量を躊躇される方には、基本的な対症療法を実施したうえで、精神面のケアもしていただければと思います。
※詳細はウプトラビ®錠の電子添文等をご参照ください。

 まず増量する前に、医師から患者さんに、増量中は一時的に副作用が強く出る可能性があることや、一定量に慣れてくることで、維持用量期には副作用の症状が落ち着いてくる可能性があることなど、今後の見通しを事前に伝えていただくことで患者さんの不安が和らぐかもしれません。

 また最大耐用量まで増量するタイミングを、患者さんと相談して決めることも大切です。患者さんは、やみくもに増量を拒否しているわけではなく、よくなることはわかっているので増量したいけれど、また副作用が出て、生活に支障が出てしまうことが不安な状態です。そのため、「万が一副作用が出ても、生活に大きな支障を来さない時期に増量しましょう」と説明して、増量するタイミングを相談することも大切だと思います。たとえば、子どもの行事が終わった翌週、仕事の繁忙期が過ぎた翌週、などのように、患者さん自身が納得して増量に踏み切れるタイミングを、相談しながら決めることで、前向きに治療に取り組むことができると思います。
 また、増量中に患者さんが副作用のつらさと向き合いながら内服を継続できていることを、医師やメディカルスタッフがねぎらうことも大切なポイントだと考えています。私の場合は、「副作用はおつらいですよね。でも、そんな中で頑張って内服を続けてらっしゃいますね」「体も突然新しい薬が体内に入ってきてびっくりしてなんとか対応しようと頑張っているかもしれないですね」「もう少しで増量のゴールですね」などのように、つらさに共感すること、つらいことだけに目が向きがちな患者さんの視点を変えられるような声掛けや見通しがつくような声掛けをして、患者さんの治療モチベーションを上げるように心掛けています。

  • 増量を躊躇される患者さんへの対応のポイント
  • 副作用に対しては基本的な対症療法に加え、精神面のケアを実施
  • 増量にあたり、副作用の今後の見通しを事前に伝える
  • 増量に踏み切れるタイミングを患者さんと相談して決める
  • 増量している過程をねぎらい、治療モチベーションを上げる

ウプトラビ®を服用中の患者さんに接するうえでのポイント

 PH患者さんと接していて感じるのは、私たち医療従事者は、内服治療のみの患者さんを、意図せずに軽視してしまっている傾向があるかもしれないということです。医療従事者は、普段、静注で治療しているような重症患者さんにも接することが多いので、内服治療のみの比較的軽症の患者さんは、「つらさはそこまで感じていないだろう」と、どこかで思ってしまっているのかもしれません。
 しかし、PH患者さん(PAH・CTEPH*)のうつ・不安および精神的苦痛に関するMixed Methods Studyを行った結果では、内服治療のみで治療されているPH患者さんであっても、うつ症状がみられることが示されています1)。したがって、ウプトラビ®などの肺血管拡張薬で治療中の患者さんも、PHQ-9*1やGAD-7*2などの簡易的なうつや不安の調査票を用いてうつ症状や不安について定期的にチェックをすることも有用ではないかと考えています。身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛に対してもサポートし、つらさの軽減と治療の継続を支援していくことが重要と考えます。

  • 内服治療のみの患者さんを、静注で治療している患者さんと比べ、意図せずに軽視してしまっていないかを留意する
  • 内服治療のみのPH患者さんにもうつ症状がみられることがある
  • PHQ-9やGAD-7などの簡易的な調査票を用いて、うつ症状や不安について定期的にチェックすることも大切
  • *慢性血栓塞栓性肺高血圧症
  • *1 Patient Health Questionnaire-9
  • *2 General Anxiety Disorder-7
  • 1)Takita Y, et al. BMJ Open Respir Res. 2021;8(1):e000876.

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